1.ラッコキーワードによる検索傾向
「ラッコキーワード」というサイトがあります。
これは、Google・YouTube・goo・Yahoo・Bingなどでなされる各種のキーワードリサーチのデータを収集して無料で提供しているコンテンツ制作者向けのツールです。
読者や視聴者が求めているコンテンツは何かといったニーズを把握して、より効果的なコンテンツ制作に役立てている方が多いようです。
このラッコキーワードに「国税審判官」と入力したときに、どういったサジェストキーワードが顕れるのでしょうか。
いろいろ検出されますが、「とは」以外には、主に以下のような語句が掲記されています。
「倍率」「年収」「弁護士」「退職金」「書類選考」「年齢」「給与」「税理士」
今回は「給与」「退職金」に関連するところを解説します。
2.給与
国税不服審判所のホームページに記載のある令和3年7月10日採用予定者の募集の詳細に以下の記載があります。
10 給与
任期付職員法に基づき支給されます(年収840万円程度から1,020万円程度を予定)
※1 上記の金額は、採用までに経験された業務内容や配属される勤務地、関係法令の改正等により変動する場合があります。
具体的年収水準のかっこ書きを記載してくれているのは高く評価でき、私もその記載がなければ応募していなかったかもしれません(他の官公庁の任期付職員の募集は、大概はこのかっこ書きがありません)。
この「840万円から1,020万円」という金額は、任期付職員法その他の法令規則から導くことができます。
上記の令和3年7月10日採用予定者の募集は令和2年6月19日に公表されていますが、その時点で施行されている任期付職員法7条1項に基づく民間出身の国税審判官の俸給(基本給)は、「4号棒:533,000円」です。
この533,000円に、(「12か月(月給)」+「一般職任期付職員の年間期末手当3.35月×管理職加算1.15」)を乗ずると8,449,382円となり、上記の具体的年収水準の下限を求めることができます。
しかし、この年収水準は任地により異なる地域手当が支給される前のものであり、国税不服審判所の所在地でこの地域手当が支給されないのは「熊本市」「那覇市」ですので、熊本国税不服審判所・国税不服審判所沖縄事務所に赴任した場合のモデル年収が840万円程度となります。
そして、例えば、大阪市(大阪国税不服審判所本所)であれば16%、東京都特別区(東京国税不服審判所本所)であれば20%の地域手当が支給されますので、この約845万円に1.2を乗じれば、上記の具体的年収水準の上限になります。
時折「上記の年収水準の幅は、『弁護士・公認会計士・税理士の資格別』又は『過去の実務経験の評定』によるのですか?」と聞かれますが、少なくとも私が国税審判官であった当時は、資格別や過去の実務経験によって国税審判官の待遇が異なることはなく、変数は「勤務地による地域手当の差」のみでした。
ちなみに、国税審判官は国税庁長官指定官職(管理職)のため、超過勤務手当(残業手当)の支給対象ではありません。
3.退職金
民間出身の国税審判官は原則として3年間の任期付職員ですが、退職手当の支給対象です。
基本の計算式は、
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給割合)+調整額
です。
民間出身の国税審判官は、任期中に国税プロパー職員のような定期昇給はなく、人事院勧告による俸給表(給与テーブル表)の改定がない限りは、採用時の俸給がそのまま適用されます。
例えば、「令和2年7月9日に3年間の任期終了で退官する民間出身の国税審判官」を例として、退職手当を計算してみます。
上記計算式の「俸給月額」は上記の「4号棒:533,000円」です。
次に、「支給割合」については、勤続年数11年未満の「定年」の場合と同様に、「0.837×勤続年数(3年)」が適用されます。
そして、「調整額」は、いわゆる管理職加算の性格を帯びており、退職直前の60か月間について、税務職俸給表3級以上の者に対して、1か月当たり級別の所定額が加算されるものです。
3年任期の場合には、まるまる60月間に収まりますので、任期中の全ての期間が加算の対象となり、民間出身の国税審判官は税務職俸給表7級(小規模税務署の署長級)相当(1か月当たり54,150円)ですので、「調整額」は以下の算式で計算できます。
54,150×0.5(※1)×37か月(※2)=1,001,775円
※1 勤続年数5年未満の場合は半分となります。
※2 月単位で算定され「平成29年7月」から「令和2年7月」まで勤務していますので、「37か月」とカウントされます。
最終的な退職手当の金額は、
533,000×0.837×3+1,001,775=2,340,138円
となります。