1.平成27年〇月〇日
弁護士出身審判官に今日の審判所長と民間出身国税審判官との意見交換会のことについて事前に聞くが「フリートークなので特に心配はいらないよ」と言われる。
副審判官にA事件の主張書面について確認してもらうよう依頼する。
しばらく赤ペンでちょこちょこ書いたあとにコメントがあったが、「棄却方向であるのにあまり請求人の言いたいことを並べさせて、最後の最後に落とすというのもいかがなものかとも思うし、それを請求人にじっくり認識させるために1年という期間があるのではないか。」という根本的なものであった。
また振り出しだなと思う反面、事前に話をしておいて良かったなとも思った。
お昼は副審判官と2人で行くが。やはり定期人事異動の話がメインになる。
(補足)
担当審判官の立場としては、審査請求人に対して積極的に主張立証活動を促すためには、審査請求人の主張を好意的に取り上げる振る舞いをして期待を持たせるという手法を採りたいと思うことがあります。
しかし、協力させるだけして、取消しの期待をさせるだけして、最終的には棄却という形で奈落の底に落とすというのも気が引けるものがあります。
副審判官は、当初から審判所が棄却方向で考えているのであれば、あまり期待を持たせるのは良くないということをコメントしたのだろうと思います。
2.審判所長との意見交換会
弁護士出身審判官と14時25分頃に支所を出発。
意見交煥会は第4合議室で行われたが管理課職員がコーヒーを運んできてビックリした。
審判所長がメンバーひとりひとりに業務その他を経験しての感想を聞かれた。
自分は、1件にこれだけの労力をかけるのかということと、求釈明や事実認定について苦労していることを言った。
裁判官出身審判官からは「簿記会計などの計数的なセンスを得るにはどうしたら良いか?」という質問があり、林さんなどが簿記のことを言うと、梅本さんが「財務諸表論も大事」という話があったが、確かに審判所では財務諸表論の方が大事な気がする。
発言は総務係長・管理係長の両係長が記録していたが、管理課や部長以上などに回覧されるのだろう。
(補足)
税理士(公認会計士)出身審判官が弁護士出身審判官に比べて力不足であると感じるのは、
・主張整理(必要な主張を補充させ、不要な主張を削ぎ落とす)
・事実認定(どこまで事実を積み重ねればこの事実を認定して良いかという頃合い)
・議決書の起案(民事判決に類似した裁決書案の起案の訓練をしたことがない)
といった国税不服審判所における職務の根本的なものが多く、1年目の私はその辺りで力不足を感じていました。
上記の林さんとは、税理士として初めて東京地裁の裁判所調査官に民間登用された林由美子さん、梅本さんとは、大阪国税不服審判所で大規模な移転価格事案に取組み、退官後数々の税務書籍をロギガ書房から出版されている梅本淳久さんのことです。
3.意見交換会後の懇親会
懇親会では、裁判官出身審判官が大きな声で不倫がバレるきっかけなどについて喋り立てて、女性の弁護士出身審判官は少し引いていた感じ。
iPhoneで2chを見ているとか、イタリアマフィアのドラマにはまって、イタリアワインとパスタばかり食べているとか、たわいもない話でガハガハ喋っていた
異動前の所長と裁判官出身審判官のラインとは、個性がかなり違う感じだ。
所長とは席が近かったので、それなりに話せた。
帰りは林さんと同期の弁護士出身審判官とともに帰る。
(補足)
意見交換会とその後の懇親会は、
・裁判官(地裁裁判長クラス)の審判所長
・判事補の裁判官出身審判官
・弁護士・税理士・公認会計士による民間出身審判官
が居酒屋で(自費で)懇談するのですが、今まで自分が全く知らなかった世界の方とたわいもない話をしている自分が不思議でしょうがありませんでした。
しかし、こういった司法関係の方との関係が、退官後の私のキャリアを方向づけしてくれるものと考えて、居酒屋の会話といえども、その内容をできる限り頭に入れて帰りたいと思っていました(私はアルコールが飲めないので酩酊には無縁です)。
「林さん」とは退官後に税理士出身の東京地裁裁判所調査官になられた林由美子さんのことです。