【0133】国税庁監察官は国税の内部警察

1.国税庁監察官の職務

国税庁監察官とは、国税庁所属の職員がしたその職務に関する犯罪及びその職務を行う際にした犯罪並びに刑法198条(贈賄)の犯罪について、犯罪及び証拠を刑事訴訟規則に基づいて捜査する権限のある国税庁所属の職員をいいます。
また、国税庁所属の職員に対する職務上必要な監察、すなわち、職員の行為について服務上の適否を調査し、非行を事前に防止、非行を発見し、そして、これらに伴う一連の処理手続を行うことを職務としています。

2.国税庁監察官制度創設の背景

第二次世界大戦後、我が国では財産税、取引高税の創設や申告納税制度が導入され、納税者の数が急激に増加しましたが、戦後間もない時期であり、急激なインフレーションの中で経済社会が混迷し、不当に税負担を軽減する納税者が多数に及ぶというモラルハザードの時期がありました。
これにより、事務量の増加や脱税者の取締りのために大量の税務職員を採用することになりますが、当時は公募による試験採用ではなく、研修等の機会も不十分で、短期間に大量に採用したことにより資質に問題のある職員も多く存在していたことから、税務職員の収賄等の非行が多発していました。
これに対応するため、1949(昭和24)年6月1日の国税庁発足とともに監察官室を設置して監察官60名を配置し、11の国税局に分室を設けて監察官を派遣する形態を採用しました。
実際には、各分室にはそれぞれを管轄する国税局から職員が出向しており、その国税局職員の人事ローテーションの一環であるものの、国税庁直轄の組織であることを可視化するために、「(例)大阪派遣国税庁監察官室」という組織としました。
現在でも、大阪派遣国税庁監察官室は、国税関係庁舎である大阪合同庁舎第3号館(15階建て)の14階(15階は食堂・会議室)に執務室を構え、1~2階の東税務署、3~12階の大阪国税局、13階の大阪国税不服審判所の上に存することを体現する配置になっています。
その後、1951(昭和26)年には定員が120名に増員、1965(昭和40)年には監察官を補佐する監察官補が20名新設され、現在は幹部職員(例えば税務署長)を定年退官した後の再任用職員としての監察官補の定員が設けられています。

3.非行とは

具体的な非行事件が継続的に発生していることは通常なく、監察官の日常的な職務としては非行を事前に防止することにあり、税務署などにローテーションで「予防講話」という研修の講師を行います。
この「非行」の範囲は、以下に掲げる国家公務員法82条1項各号に掲げる懲戒の事由に該当する全ての行為をいい、全ての犯罪だけではなく、犯罪とまではされない違法又は不当な行為も含まれると解されています。
・国家公務員法又は国家公務員倫理法若しくはこれらの法律に基づく命令に違反した場合
・職務上の義務に違反し又は職務を怠った場合
・国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
すなわち、監察官は、国家公務員法82条1項各号に掲げる懲戒の事由に該当する全ての行為のうち、職務犯罪に関するものについては刑事訴訟規則に基づく「捜査」権限を行使し、職務以外の一般犯罪その他の非行全般については「監察」によって取締りを行うことになります。

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