1.職務上の犯罪の類型
多少データは古くなりますが、平成30年度の国家公務員全体の懲戒処分は300人発生し、うち国税庁関係は47人が発生していますが、平成26年度からの5年間を遡っても概ねその水準にあります。
犯罪の類型としては、以下の3つに分類されます。
❶ 文書の取扱いに係る犯罪
❷ 秘密の取扱いに係る犯罪
❸ 財産や利得を得る犯罪
2.文書の取扱いに係る犯罪
課税証明書等の偽造・虚偽作成、証拠の毀棄などが該当します。
例えば、国税徴収官が税務調査に必要と偽って自宅近隣や所有する土地等の不動産登記簿謄本を職権で不正取得した例(虚偽有印公文書作成・同行使容疑で書類送検)、査察部職員が妻名義のクレジットカード情報を入手するため、国税局長名義の照会文書を作成してカード会社に郵送して回答させたという例(虚偽有印公文書作成・同行使容疑で在宅起訴)があります。
3.秘密の取扱いに係る犯罪
納税者や税理士に対して調査対象となっているか否かを漏えいすることや、職務で必要のない情報を職権で収集することなどが該当します。
例えば、職務外の目的で職務上知り得た納税者の住所や生年月日などの個人情報を交友関係にあった知人男性に漏らしたという例があります(減給10分の2・3か月の懲戒処分)。
4.財産や利得を得る犯罪
調査による修正申告慫慂事項を少なくするための収賄や、滞納に充当するために預かった現金の横領、不正還付による私文書偽造と国庫金搾取などが該当します。
例えば、調査先の追徴税額を低く抑える見返りに現金を受け取ったほか、税理士ではないのに確定申告書の作成を請け負って対価を受け取っていたという例(収賄容疑で書類送検)があります。
5.職務関連非行
例えば、税務調査を担当した企業のデータをシステム上で不正に変更したという例(停職3か月の懲戒処分の後に辞職)や勤務時間中に庁舎内のトイレ等でスマートフォンを利用した株取引を継続して行っていたという例(減給10分の1・3か月)があります。
6.公務外非行
飲酒に起因した各種の非行(酒気帯び運転・暴行・器物損壊・自転車等の寸借)が典型で、酒気帯び運転の上で電柱に激突して道路交通法違反容疑で逮捕されたという例(停職6か月の懲戒処分)があります。
また、税理士類似行為、痴漢、盗撮、万引きなどが該当し、例えば、駅構内のエスカレーターで女性のスカートの中を盗撮したとして県迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕され、常習盗撮行為による起訴の上で懲役6か月(執行猶予3年)の一審の有罪判決及び控訴審棄却を踏まえて減給10分の2・3か月の懲戒処分を受けた例があります。
7.国家公務員法違反
税務職員の利害関係者は幅広く、管内の納税者はもちろんのこと、殊に税理士については全国全ての登録者が利害関係者に該当しますが、利害関係者との間の金品の受贈やもてなし、金銭の借受け、麻雀・旅行・ゴルフを伴にすることは国家公務員法において禁止されています。
例えば、調査先から10万円を借り入れたほか、職員組合の組合費123万円を私的流用したとして、国家公務員法違反と倫理規定違反で停職3か月の懲戒処分を受けた例があります。
また、利害関係者でなくても、社会通念上相当と認められる程度を超えて供応接待を受けてはならず、例えば、飲食店で「税務職員さんだからお代は良いわ(安くしておくわ)」といった便宜を受けてはいけません。