【0294】民間出身国税審判官の或る日の日記(その51)

1.平成27年8月〇日

少しずつ夏季休暇モードになり、今日から弁護士出身審判官が連続休暇。
裁判所書記官出身のB審査官は9月に育児参加休暇を取得することもあって、今日のみ休暇ということだが、古巣の地裁支部に行くらしい。
自分も遅めの電車で定時15分前に到着。
総務係長から昨日の人事院勧告のメールが来ていた。
自分は昨日の帰りの電車の中でチェックしていたが、俸給は俸給表の切り下げがあったので、ベースアップがあったと言っても現給保障と相殺されてしまう。
ただ、その分地域手当で色を付けているようであるが、地域手当は地域によってまばらなので、一様にベアの影響を受けられるものではない。
自分は2級地で15%→16%であるが、4月に遡って15.5%になるようだ。
これで2,710円の昇給になるが、肝心の期末手当が一般には(報道でも)0.1月増加になっているのに、なぜか民間出身の国税審判官は0.05月のみの増加でちょっとがっかり。
ただ、平成28年4月からは地域手当が早くも16%になる。
1級地の東京特別区は18%→20%で、平成27年度は18.5%になったが、平成28年度から一律20%になるようで、こっそり中央官庁優遇の勧告になっているのではないか。
平成27年度の自分のモデル年収は、542千円×1.15×(12+3.1×1.15)≒970万円から、542千円×1.155×(12+3.15×1,15)≒978万円となり、平成28年度は542千円×1.16×(12+3.15×1.15)≒982万円となる。
ちなみに、東京支部の同期となる平成26年度任官の審判官の平成27年度モデル年収は542千円×1.185×(12+3.15×1.15)≒1,003万円、平成28年度は542千円×1.2×(12+3.15×1.15)≒1,016万円となるが、大台に乗るのか・・・物価も高いだろうが。今日も部長・総括審判官・主任審判官の3役の打ち合わせが長引いていて50分くらいやっていたが、毎日何をしゃべっているのだろうか?
第一部2部門の主任審判官(前事務年度の神戸支所の主任審判官)がやってきて、主任審判官と喋っているが、そういえば普通科38期で同期だったな。
庶務担当副審判官が「えらい静かやなと思ったら弁護士出身審判官がおらんのやな。」と言いに来ていた。

2.予防講話

13時30分の予防講話を忘れていて、15分前に言われて気がついた。
A審査官が、去年の20年の永年勤続表彰の時に「審判所の表彰対象が自分を含めて2人しかいなくて、自分以外のもう1人が檀上に登って『他の表彰者起立』の号令がなかったので立たなかったら、周りの国税局・税務署に在籍している同期に『審判所に行ったからといってふてくされるなや。』と言われた。」と言っており、やはり、審判所に異動になるというのは出世コースから外れたということなのだろうか。
予防講話は管理課長の講話が30分、DVD放映が30分であったが、前半の話で、「先日の大阪国税局全管の署長会議において、大阪局は懲戒処分対象者が人員的には定員相当の割合だが、職務関連非行では定員それを上回っており異常であるとの話があった。自分は前事務年度は課税部資料調査課の2課長だったが、1課長は東京から赴任してきた。1課長を他局から迎えることになったのは全国初であり、それだけ大阪国税局の権威が落ちてきている。」とのコメントが印象的だった。
DVDは、「割り勘負け」「コンサートチケット受領の可否」「通報制度」についてだったが、国税庁監察官室によるものではなく、国家公務員全般向けのDVDだった。

3.審判所長会議の議題に対する意見聴取

予防講話後は審判所長会議の議題に対する意見聴取内容を考えていた。
「裁決の質的向上について、自身が議決書作成において工夫している点や注意している点」については、以下のように回答した。

裁決書案となる議決書は、第一義的には審査請求人及び原処分庁を意識して作成するものですが、目の前の審査請求人の権利救済の要否だけを判断すれば足るということではなく、それが独り歩きして将来の納税者の参考となり得るものになるか、自分の採ろうとする判断が税務行政にどのような影響を与えるかという、複眼的な視点(詰まるところ、「納税者の正当な権利利益の救済」と「税務行政の適正な運営の確保」の両立)を持ち合わせて作成に当たる必要性を認識しています。
また、元大阪国税不服審判所長の本多俊雄さんは、平成24年1月27日の大阪支部における講演「紛争解決について思うこと」において、「私は、高校3年生の理解力でも、読んで分かる裁決というのを目標にしていました。裁決内容は、場合によっては納税者の判断指針になりうるものです。事案の当事者だけでなく、第三者が読んでも、ある程度理解してもらえるようなものを目指すことが必要ではないかと感じています。(講演録34頁)」と述べておられますが、「1文が長くなりすぎない。」「5W1Hを意識する。」「難解な表現で書き手の個性を出すことは期待されていない。」「くどくならない。」といった基本的な姿勢を再認識する必要があると考えます。
個人的には、裁決書において採用される表現の習得という観点から、平成26事務年度以降の大阪支部における「所長見え消し裁決書」を逐次確認しています。」

「審理手続の終結に当たり法規審査に要する期間の安定的な確保」については、以下のように回答した。

現行の運用においても、審理の状況予定表によって、法規審査に要すると見込まれる期間が審査請求人に開示されています。
しかし、改正国税通則法施行後には、審理手続の終結通知によって、審査請求人は、近々に裁決書が到着するとの期待をさらに強く抱くことになると思われます。
法規審査に要する期間の偏差が、時期の特性(異動時期等)や支部の規模(規模の大きな支部でも主席審判官は1名)といった要素によるものであれば、ある程度やむを得ないものがあります。しかし、少なくとも、合議体と法規審査部門が、議決の方向性の違いをモデル議決期間の終盤まで修正できない事態は避ける必要があります。
また、法規審査において証拠収集の不足を問われることが、法規審査に要する期間の長期化を招くことになりますので、合議体は、法規審査部門が懸念する論点を議決前に把握して、それに対処する必要があるかどうかを検討しておく必要があると思います。

「職権調査」についてはコメントなしとして、「その他改正国税通則法の施行」に関しては、以下のように回答した。

改正国税通則法の施行後しばらくは、新旧の手続が並行することが想定されます。
支所勤務経験者としては、とりわけ支所における事務運営について、その人員体制に限りがあることにより、審査請求人もしくは審査請求を検討している納税者に対して、誤った回答、もしくは、誤った手続をする(不作為も含む)リスクが本所よりも顕在化することを懸念しています。」と書いて、(国家公務員のサマータイムである)ゆう活で帰った後の庶務担当副審判官に送った。

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