【0137】国税不服申立てにおける代理人

1.代理人の選任

不服申立人は、弁護士、税理士その他適当と認める者を代理人に選任することができ、弁護士、税理士に限られません。
しかし、不服申立てに関する代理を業とすることについては、税理士法第51条及び第52条の規定による制限があり、税理士又は所定の手続を経た弁護士に限られることに留意しなければならなりません。
税理士及び弁護士以外で実際に代理人に選任されているケースとしては、不服申立人が高齢である場合の親族や不服申立人が所属する商工団体の事務局員などがあります。

2.代理権の範囲

不服申立てに係る代理権は、不服申立ての種類ごとにその範囲を明確にして与えられることを要しますので、例えば、再調査の請求についての代理権のみを与えられている場合には、再調査の決定を経た後の処分について審査請求をするときは、新たな授権を必要とします。

3.代理権の員数

代理人は1人に限られず、複数を選任することができます。
しかし、代理人が複数選任された場合においても、再調査審理庁、国税庁長官、国税不服審判所長又は担当審判官の代理人に対する通知その他の行為は、うち1人の代理人に対してすれば足りることになります。
例えば、国税不服審判所においては、代理人は3名以内とするよう要請しているようです。

4.代理人の権限

代理人は、不服申立人のために、不服申立てに関する一切の行為をすることができます。
代理人の権限が当事者の契約によって任意に伸縮されるならば、審査庁はいちいち代理人の権限の範囲を調査しなければならなくなり、審理に支障をきたします。
そこで、迅速な救済と手続の安定に資するため、代理人の権限を上記のように画一的に決定したものとされています。
不服申立てに関する一切の行為とは、不服申立書の提出等の能動的な行為のほか、通知の受領等の受動的な行為を含む一切の行為をいいます。
しかし、ここで「不服申立てに関する一切の行為」とは、あくまでも、不服申立てに関する書類の提出、その申立てに関して必要な手続その他の行為であり、代理人が申立人に代わって不服申立ての目的となっている所得の有無等について調査を受けることや、(税理士の権限である)調査に立ち会うことまでは含まれていません。
すなわち、税理士法や各税法上の守秘義務を排除してまで、代理人に新たな権限を与えたものとは解することができないのです。
複数の代理人が選任された場合においても、各代理人はそれぞれが一切の行為を代理する権限を有し、不服申立人が、各代理人の代理権の範囲に制限を加えることはできません。

5.特別の委任

不服申立ての取下げ及び復代理人の選任については、不服申立人から特別の委任を受けなければすることができません。
不服申立ての取下げ等の重要な権限については、不服申立人の権限の保護を図る趣旨から、特別の委任を要することとされています。
不服申立ての取下げ又は復代理人の選任についての特別の委任とは、不服申立てに関し一般的にされた委任ではなく、特にこれらの事項に限ってされた特別の委任と解されています。

6.代理権の証明

不服申立ての取下げ及び復代理人の選任の特別の委任は、書面によって証明しなければなりません。
また、審査請求についての代理人の権限の証明がされない場合又はその証明が明瞭でない場合には、補正要求を行い、当該補正要求が履行されないときは不適法な不服申立てとなりますが、代理人による不服申立てとしては不適法であるも、不服申立人本人の不服申立てとしてみれば適法なもの又は補正可能なものは却下することなく、当該不服申立人本人の不服申立てとして取り扱われなければなりません。

7.代理権の消滅

不服申立てに係る代理権は、委任の解除により消滅するほか、申立人本人が死亡した場合、申立人たる法人が合併により消滅した場合、代理人が死亡した場合又は代理人が後見開始の審判若しくは破産手続開始の決定を受けた場合にも消減します。
代理権限が消滅した場合には、不服申立人は、書面でその旨を届け出なければなりません。
なお、代理権の消滅は、その届出前に代理人によってなされ、又は代理人に対してされた一切の行為の効力に影響を及ぼしません。

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