1 共同不服申立てができる場合
複数の不服申立人が、一の処分又は同一の事実上及び法律上の原因に基づき、画一的に処理されなければならない複数の処分について、共同して不服申立てをすることがあります。
例えば、複数の抵当権者が一の差押処分について共同して不服申立てをする場合又は複数の相続人が相続税の課税価格の合計額若しくは相続税の総額に係る各相続人の相続税額につきされた更正処分について共同して不服申立てをする場合が典型です。
したがって、単に目的となる処分が複数であるというだけでは、共同不服申立てはできません。
なお、共同不服申立てがされた場合において、共同不服申立てとしては不適法ではあるが、個々の不服申立人の不服申立てとしてみれば適法なもの又は補正可能なものについては、個々に不服申立てをする意思がないと認められるものを除き、当該個々の不服申立人の不服申立てとして取り扱うこととされています。
2.総代の互選
多数人が、共同不服申立てをするときは、その共同不服申立人は、3人を超えない総代を選任することができます。
ここで、多数人とは、総代が3人以下に制限されているところからすると、共同不服申立人が4人以上の場合をいうものと解されます。
この互選とは、選任権者と被選任権者の資格が同一である場合の選任をいうことから、共同不服申立人のなかから総代を選出することになります。
3.審判所長等による総代の選任の命令
再調査審理庁又は国税不服審判所長若しくは国税庁長官は、必要があると認めるときは、共同不服申立人に総代の互選を命ずることができます。
この互選命令は、すべての共同不服申立人に対してしなければならないと解されています。
共同不服申立人が再調査審理庁又は国税不服審判所長若しくは国税庁長官の総代の互選命令に応じないときは、その共同不服申立ては不適法なものとして却下されることになります。
4.総代の権限
多数の事件の迅速な処理、手続の安定の要請等に応え、各総代についてその権限の範囲を調査しなくてもよいようにするために、その権限を画一的に法定されています。
すなわち、総代は、共同不服申立人のために、不服申立てに関する一切の行為をすることができるものの、代理人と異なり、特別の委任があっても不服申立ての取下げをすることはできません。
なお、総代が代理人を兼ね、特別の委任を得れば、不服申立ての取下げをすることも可能です。
総代が複数選任された場合には、各自が総代の権限を行使でき、総代が共同して行為をする必要はありません。
5.不服申立人の地位
総代が選任された場合においては、代理人による不服申立ての場合と異なり、共同不服申立人の不服申立てに関する一切の行為(不服申立ての取下げを除く)は総代を通じてのみこれを行うことができます。
したがって、不服申立人が自ら行った行為はその効力を生じないとともに、国税不服審判所長等も、通知その他の行為は、総代に対してしなければならないことになります。
不服申立人が、総代を通じてのみ不服申立てに関する行為をできることとしたのは、他の共同不服申立人も自らこれらの行為をすることができることとすれば、争訟経済に反するばかりでなく、審理に混乱が生ずるおそれがあるからです。
6.総代に対する通知等
総代が選任されたときは、国税不服審判所長等が通知その他の行為をするときは、その総代に対してしなければならないことになり、この場合において、2人以上の総代が選任されているときでも、通知等はそれぞれの総代にする必要はなく、そのうちの1人に対してすれば足ります。
このことは、担当審判官がする通知等にあっても同様です。
7.総代の解任
共同不服申立人は、必要があるときは総代を解任することができますが、ここでいう必要があるときとは、たとえぱ、共同不服申立人の全員(解任される総代を除く)が総代を適当でないと認めた場合です。
なお、総代の権限は、解任された場合のほかにも、総代が死亡した場合又は総代が後見開始の審判若しくは破産手続開始の決定を受けた場合においても消滅します。
8.書面による証明
総代を選任したときは、総代の権限は書面で証明しなければならず、この書面による証明は、総代選任書等の提出によることになります。
また、総代がその権限を失ったときには、不服申立人は、書面でその旨を国税不服審判所長等に届け出なければなりません。
総代がその権限を失った場合においても、審判所長等に届け出がされる前にされた総代の行為又は総代に対してされた一切の行為の効力には影響が及びません。