【0305】民間出身国税審判官の或る日の日記(その62)

1.平成27年〇月〇日

シルバーウィーク5連休明けの出勤だが、第2部は、主任審判官、自分、1部門の弁護士出身審判官、1部門の副審判官、庶務担当審査官の5人で、庶務担当審査官は不服申立制度改正プロジェクトで別室作業のため、ただでさえ広い執務室に実質的には4人しかいない。
自分は、部長審判官会議の意見聴取のために、審査事務提要案を読み進める。

口頭意見陳述については、
・原処分庁は税務署長本人のことを指しその部下職員が含まれないから別途出席者名簿を提出させないといけない。
・発問権を行使する場合の実務的運用(あらかじめ質問内容を書面として提出させるなど)
・同席主張説明との関係(発問権を行使するような事案は同席主張説明をしなくても良いのでは。

審理手続の終結については、
・整備される通達で「合議により」終結の判断をする旨の記載があるため、審理手続終結会議を別に開催すべき(最終合議と同時開催もあり得る)
・終結すると、審理関係人の権利を制約する半面、担当審判官による求釈明や検査もできなくなる(必要があれば審理を再開すれば良いのだが)

証拠の保管返還については、
・担当審判官以外(分担者など)が預かった場合、担当審判官に引き継いだ場合には「保管者の変更について」を送付しないといけない(従前と同じ)

閲覧謄写については、
・審理関係人の発言を記録した録取書や質問調書は閲覧対象ではないが、その者が閲覧を求めれば開示する(面談の場における写しの交付は認めず)。
・物件提出者が意見を述べない場合は担当審判官の判断でマスキングする。
・許可は担当審判官決裁だが、不許可は所長決裁になる。
・原本そのものの閲覧やマスキング場所の開示を求められた場合は、口頭で拒絶すれば足る。
・閲覧対象の証拠内容について担当審判官がコメントする立場にはない。
・閲覧手段にはデジカメ・スマホを含むが、庁舎の電力は使わせない。
・閲覧実施後に新たに入手した証拠について、審理関係人が閲覧等を請求していない場合には、担当審判官が閲覧請求するかどうかの意思を確認する。
本当にこちらから「閲覧しませんか?」って言うのか?

形式審査については、
・答弁書要求期間はおおむね4週間
これまでの大阪支部の常識からすると「そんなに待つの?」という気がする。

担当審判官の指定については、
・担当審判官の忌避・変更の申立てはできない。
「法律上認められない」旨の所長名義の書面を送ることは予定されていた。

2.弁護士会への講師派遣

総務係の主任が、主任審判官に、「配偶者の出産対応のために休暇を取得しているB審査官の現在の休暇の振り分け(年次休暇・育児参加休暇・育児休暇)についてどうするか。」みたいなことを聞いているが、本人が出勤してからということになった。
連休中の〇日の午後に生まれたそうである。
総務係長が主任審判官のところに来てフリーデスクで喋っていたが、大阪弁護士会からの講師派遣依頼で、司法修習生を対象としたもののようである。
既に受諾の決裁がなされていて、しかも、近い将来のものであるが、今日は総括審判官が休みだから主任審判官のところに来たのだろうか?
いずれにせよ、自分は力不足で、弁護士出身審判官に回ってくるのではないだろうか?
お昼になって自分だけパンを買って来て、他の人は15階の食堂若しくは別行動になったので、自分が事実上執務室の留守番をしている。
第1部の審査官が、「2部門の弁護士出身審判官は休み?交通事故のことで聞きたいんやけど。」と訪ねて来たが休みなので、1部門の弁護士出身審判官のところに行ったらけんもほろろに断られ帰って行った。

3.不服申立制度改正の実務対応に係る自分の回答案

意見聴取については、以下のように考えた。

「口頭意見陳述における申立人による原処分庁への質問の許可について」
・口頭意見陳述における申立人からのアプローチには様々なケースが想定され、それに対応するためには、当初から担当審判官の裁量を狭めるような記載ぶりにならないことが望ましく、事務提要(案)の記載ぶりで問題はないと考えられる。
・ただし、実際には、事前に「原処分庁質問書面」の提出を要請するケースが多くなると考えられるものの、事前に提出された同書面に、通則法95条の2第3項が準用する同法84条第5項の「その他相当でない」質問が含まれていた場合に、当該質問を不許可にする夕イミングはいつになるのかが判然としない。
・「原処分庁質問書面」は、口頭意見陳述の円滑な実施のために、できる限り事前の提出を要請するというスタンスであると考えられるため、口頭意見陳述前に不許可にできるかという問題があり、さりとて、「その他相当でない」質問を含めて原処分庁に送付しておきながら、口頭意見陳述の場ではじめて不許可にするという対応を採ることも双方の理解が得られるかという点で疑問がある。

「審理手続の終結について」
・不服審査基本通達については、総務省見解に従った訂正案によるほかはないと考えられるが、担当審判官の意思決定から通知までのタイムラグの間に審理関係人が主張立証の活動をしないように、初期段階からの周知のほか、「争点の確認表」の内容確認時に「特に意見がなければ審理手続の終結を予定している」旨のアナウンスをすることにより、「終結の不意打ち」がないように配意する必要がある。
・審理手続終結会議については、実際には、最終合議との連続開催が多くなるように思われるが、最終合議と分けて開催する場合においても、制度改正対応により事件処理日程が夕イトとなる中で、さらなる負担(日程の長期化圧力)にならないよう、運用面において配慮する(合議メンバーの限定、事前検討資料の省略化など)必要がある。

「証拠書類等の閲覧一写しの交付の請求のタイミング等について」
・閲覧請求の機会を確保することは、審理関係人の権利確保の観点から重要である。
・その一方で、簡易・迅速な救済という行政審判の役割、加えて、閲覧は審理関係人に与えられた権利であることからすると、「まだ閲覧していない証拠書類等があるが閲覧するか。」といったアナウンスを「担当審判官からのアクション」として行う必要まではなく、「現時点で閲覧していない証拠書類等があれば閲覧したい。」という「審理関係人からのアクション」に対して担当審判官が都度対応するというスタンスで良いと考えられる。

「審査請求が明らかに不適法であると認められないときの答弁書要求について」
・審査請求の適法性に関する答弁内容によっては、原処分の適法性について審理する必要がなくなる可能性があり、その点においては(2:審査請求の適法性が確保されていることを確認してから原処分の適法性についての答弁を求める)の選択肢が整合的であると考えられるが、審査請求の適法性が確認された後の実質審理の効率性まで考慮すると、両方の提出期限に差を設けて答弁書要求をすることを許容する(3:両方同時に要求して期限に時間差をつける)の選択肢がもっとも相応しいものと考えられる。
・ただし、実際には、分離して提出することの煩雑さから、同時に1冊の答弁書として提出してくるケースが多いのではないかと推察される。

4.新しい事件の概要把握

定時である17時半までは、自分の担当するB事件の事件検討表の作成を再開するとともに、B審査官に対して現在の判明事項を1枚もので作成する。
B審査官が来週出勤したら、一度関連する事件を担当する第1部の会計士出身審判官・審査官と法規審査担当の審査官に挨拶に行こうと思う。
結局A事件は触らず障れずという感じで、明日主任審判官に話しかけながら進捗状況を探ることにしよう。
そういえば、午後から1部門の弁護士出身審判官を見掛けないが、早退なのか出張なのか?
定時までは、新たに部門に配付されたC事件の審査請求書を読むが、・・・という主張のようである。

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