【0307】民間出身国税審判官の或る日の日記(その64)

1.平成27年〇月〇日

配偶者の出産で年次休暇と育児参加休暇を取得していたB審査官が半月ぶりに出勤したが、この期間に事件関係での状況説明をめいめいの担当者から受けるとともに、財務省共済組合関係の提出資料の依頼を総務第1係の主任から受けている。
1部門を見ると今日から庶務担当審査官が自席に居るので、国税不服申立制度改正プロジェクトがひと段落したということだろう。
副審判官から「牛乳を継続的に飲んでいるんですか?」と聞かれ、カフェオレにしていることを言い、「牛乳だけ『腰に手を当てて飲んでいる。』わけではないですよ。」と付言して笑いを誘う。
人間ドックは今回特に異常なしで帰ってくるが、本所でも精密検査整理票を総括審判官に提出しないといけないのか、一応主任審判官に聞くが、「俺こんなん出したことないな~。」と言われる。
A審査官によると、今日辺りに回覧が回ってくるようだ。
管理課の主任などが副審判官を訪ねてきたが、土曜日に行われた局部署対抗ソフトボール大会の慰労らしい・・・お釣りのやり取りもしていたので懇親会もあったということだろう。
第1部の審査官が弁護士出身審判官を訪ねて来て、先週相談し損ねた交通事故関連の相談をしている。
本部の総括審判官が10月2日に改正プロジェクト関係で出張に来るようである。
やはり、大阪弁護士会の司法修習生向けの研修会は弁護士出身審判官がするようである。

2.伝家の宝刀を頻繁に抜いている

審査官2人がA事件についてヒソヒソしゃべっているが、「伝家の宝刀は頻繁に抜くものではないが、原処分庁が結構抜いている事案を見る。」「・・・」と言っている・・・担当審判官である自分が置き去りだが。
B事件の当初合議が〇月〇日で決まったということで、〇日に資料配布をするために合議資料を作成しないといけない、ということを副審判官がB審査官に言っている。
弁護士出身審判官から、「審査請求書」「閲覧等請求書」「口頭意見陳述の申立書」の様式改訂について意見募集の回覧があったが。特に指摘すべき事項はなかった。
「異議申立て」→「再調査の請求」などの文言整理は当然として、確かに「期間徒過についての正当な理由」についての記述欄などの新設や、「復興税や地方法人税があれば本税に含む」「口頭意見陳述につき原処分庁の同席有無確認や事前の質問事項の送付の慫慂」などの記載はなるほどと思った。
ただ、A審査官が、事務処理の手引きなどをひっくり返して調べているようであり、何か一家言あるのかもしれない。
部門に係属していたC事件の裁決が出たことについての「裁決連絡せん」が回ってきたが、審判所長による決裁状況で既に確認済みなので、そのまま副審判官に回す。

3.民間出身の国税審判官による勉強会

昼休みの民間出身の国税審判官による勉強会は、弁護士出身審判官が任官後最初に担当した事案がネタだったようであるが、「原処分庁出身の職員はグレーを黒にしたがる傾向にある」などのコメントがあった。
最初は自分も話に寄れなかったが、表面的に「なぜ、・・・のか。」という質問をした。
裁判官出身審判官は「・・・」とコメントしていて、「みんな事件を深く検討する能力があって良いな~」と改めて思う。
最後に会計士出身審判官が、「皆さまのご活躍をお祈りしております。自分は(産休・育休後に)無事復帰できることを願って。」と言っていたが、復帰することは任期延長になることが前提であることを意図しているのか?

4.調査手続違法の法令解釈

・・・を改めて読むが、平成25年の調査手続に係る国税通則法改正後も、東京高裁平成3年6月6日判決の規範はそのまま使えるということである。
その規範は、「調査手続の単なる瑕疵は更正処分に影響を及ぼさないものと解すべきであり、調査の手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び、何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に限り、その処分に取消原因があるものと解するのが相当である。」と判示している。」
B審査官がA審査官にD事件の進捗のことを聞いてきたことをチャンスに自分も加わって自分がB審査官に伝えたいことを伝えた。
主任審判官が2時間の年次休暇で15時30分に退所するも、その後に部長が主任審判官を訪ねてきた。
国税庁監察官室のリーフレットの案内が管理課から来るが、交通事故についてであり、「自転車も加害者になる」ことや「被害者の手記」が掲載されていた。
〇月〇日の民間出身の国税審判官と審判所長による意見交換会後の懇親会場の案内が総務係長から来ていて、京阪渡辺橋駅が最寄りのようであったが、そんなところまで行くのかという気がした。
前の審判所長である瀧華聡之さんが挨拶に来られ、顔ぶれを見て「あまりお変わりないようですね。」と言われたが、どこかに異動になるようで、来年1月の研修会で恒例になっている「前所長講話」は難しいようだ。

5.国税不服申立制度改正の意見聴取依頼

庶務担当副審判官が、「また本部から意見聴取が来たが、今回は軽い。」と言いに来た。
内容を見ると、「標準審理期間や審理手続の終結から裁決までに期間についてのQ&A」や「審理手続の終結から裁決までに期間を要することの想定問答」についての本部案についての意見聴取である。
内容を読むと、「最終合議で議決を行います。」とあるが、「議決日が最終合議開催日となるのか。」「最終合議添付議決書案に対して指摘かあり、その場で修正できない(検討を要する事項がある)場合は、再度合議を開催してその場で議決することになるのか。」という疑問が湧いたのでそれをコメントした。
また、「法規・審査」の役割について、現状の「文書審査等」から「法令の解釈適用等の審査」に改めることについては、実際にはそのとおりと考えられるものの、文章表現としてそれにすると、「議決に基づく裁決」ではないのではないかとの疑念が独り歩きしてしまう(審査請求人に実際に相対する合議体の意思が尊重されていないような印象を与えてしまう)可能性があるため、現状の表現がふさわしいとコメントした。
定時まで財務省共済組合の被扶養者認定関係の書類を書くが、これは任官前に書いて以来である。

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