【0014】給与の追給と回収

1.国税局(税務署)と審判所は会計単位が異なる

民間出身とりわけ資格業の経験しかない者が公務員組織に入ると、多かれ少なかれカルチャーショックを受けることになりますが、任官当初の例をご紹介します。

民間出身の国税審判官は7月10日に採用されるので7月の給料は日割り支給になりますが、国税局(税務署)から国税不服審判所に異動になった者については、国税庁職員であることに変わりはないため7月分もまるまる1か月分の給料が支給されます。

しかし、国税局(税務署)と国税不服審判所は、国税庁内部といえども組織としては別の機構であり、給料はその在籍期間に応じてそれぞれの機構が負担すべきものです。

ここまでは民間企業においても同様の思考ですが、その負担の手法が異なります。

2.7月分給料の精算

平成26事務年度に大阪国税不服審判所に転入してきた職員に対する研修の場で、管理課の課長補佐が給与関係の説明をしていました。

「7月10日以降分の給料については、審判所から別途皆さんに『追給』します。しかし、支給日は16日のため、7月分の給料は旧組織(国税局・税務署)からまるまる1か月分支払われます。ついては、これから各自に振込用紙をお渡ししますので、旧組織から支給される7月分の給料のうち7月10日以降分については、金融機関で各自納付することにより『回収』します。

自分には無関係ながら、私は耳を疑いました・・・「なぜそんな迂遠なことをするのだろう」と。

確かに、異動内容が公表されるタイミングが直前という事情もあるでしょうし、財務省の給料支給日が16日のため、給与計算のタイミングが間に合わないという事情も理解できます。

それにしても、振込用紙を配付して各自に精算させなくても、国税局(税務署)の会計課と審判所の会計係との間で該当者分の精算を一括ですれば良いことですし、会計単位を異にする異動者情報については事前に共有して、7月分についてはそれぞれの機構から支給する仕組みを構築することもできなくはないでしょう。

これまで監査という視点で企業をレビューしてきたから気になるのかもしれませんが、民間企業であれば、少なくとも各自にバラバラ精算させるようなことはしないでしょう。

3.給与の追給と回収が存在する背景

上記のような迂遠な実務が存在する背景として、「業務効率まで犠牲にして、過度に異動情報を秘密にする」組織文化があるのではないかと思います。

異動情報を握るのは、指定官職については国税庁であり、一般官職については国税局総務部人事課ですが、自らの求心力を維持するために異動予告日直前まで秘密を貫いているように窺えます。

審判実務そのものに関しては業務改善提案をすることが奨励されていましたが、こういったことを外様職員が叫んだところでどうなるものでもなく、「バックボーンが異なれば疑問に思う事柄も異なるのだろう」と自らで消化していました。

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