1.民間出身の国税審判官に対する導入研修
多くの会社がそうであるように、入社直後には各種研修があり、それは国税不服審判所においても同様でした。
国税不服審判所の民間出身の国税審判官を対象とした研修としては、任官当初に大阪国税不服審判所において主に国税組織に関する導入研修があり、また、税務大学校において審判実務研修を受講するために上京した際には、国税不服審判所本部(財務省本庁舎4階)において本部所長講話・監察官講話を含めた導入研修があります。
2.期別から年齢がわかる算式
本部における研修において、当時の管理室長(国税庁キャリア官僚)が、2人の国税職員の職務経歴を配布しました。
1人は国税庁キャリア採用者、もう1人はノンキャリ採用者(税務職員・国税専門官)で、それぞれのポストアップの流れを説明するためのものでした。
その管理室長は、民間出身の国税審判官は弁護士・税理士・公認会計士という比較的フラットな組織しか経験していないのに対して、国税を含む公務員組織はヒエラルキー構造であり、その組織構造を理解してもらおうと考えたようです。
その管理室長は、次のような算式を教えてくれました。
・67から専科(大卒採用)の期別を差し引くとその職員の年齢になる。
・93から普通科(高卒採用)の期別を差し引くとその職員の年齢になる。
これは平成26事務年度のお話ですので、現在の令和元事務年度(平成31事務年度)に置き換えると、以下のようになります。
・72から専科(大卒採用)の期別を差し引くとその職員の年齢になる。
・98から普通科(高卒採用)の期別を差し引くとその職員の年齢になる。
令和元年事務年度における(浪人・留年・前職がない場合の)60歳の定年予定者の期別は、専科は12期・普通科は38期になりますので、以下のように検算できます。
・60+12=72
・60+38=98
3.この算式の意味
その管理室長は、「これから何かにつけて国税職員の期別を聞くことになると思うが、それによって年齢の目安がわかる」ことを説明していました。
最近は、普通科も専科も浪人・留年・前職がない職員の割合が減少して、上記算式がそのまま当てはまらないようですが、定年まであと数年といった世代は、浪人・留年・前職がない状態で国税組織にコミットしていることが多く、そういった世代には上記算式はまだまだ有力な年齢推察手法となります。
私は、普通科生であれば51期相当、専科生であれば25期相当になるのですが、これを心得ておくと、「この職員は自分よりも年上か年下か」ということが瞬時にわかるようになります。
建制順としては国税審判官である自分の方が上であったとしても、年上の部下職員に対しては「人生の先輩として処遇する」という意識がないようでは、ヒエラルキー著しい公務員組織で摩擦を惹き起こすことになりかねません。
たとえ民間出身者といえども、常勤として国税不服審判所に勤務する以上、「国税職員のしきたり」を心得ている方がコミュニケーションは密になり、職務も円滑に進みます。
国税不服審判所における3年間は、事案の経験はもとより、こういった「国税職員のしきたり」を吸収する貴重な期間でもありました。