1.年収水準の表記
民間出身の国税審判官の募集が開始され、国税不服審判所のホームページや税理士会・公認会計士協会などの会報誌にも掲載されます。
やはりご関心があるのは待遇面だと思われますが、令和2年7月10日採用予定者の募集の詳細に以下の記載があります。
(一部抜粋)
10 給与 任期付職員法に基づき支給されます(年収840万円程度から1,010万円程度を予定)
※1 上記の金額は、採用までに経験された業務内容や配属される勤務地、関係法令の改正等により変動する場合があります。
具体的年収水準のかっこ書きを記載してくれているのは高く評価でき、私もその記載がなければ応募していなかったかもしれません(他の官公庁の任期付職員の募集は、大概はこのかっこ書きがありません)。
2.年収水準の根拠
この「840万円から1,010万円」という金額は、任期付職員法その他の法令規則から導くことができます。
上記の令和2年7月10日採用予定者の募集は令和元年6月20日に公表されていますが、その時点で施行されている任期付職員法7条1項に基づく民間出身の国税審判官の俸給(基本給)は、「4号棒:533,000円」です。
この533,000円に、(「12か月(月給)」+「一般職任期付職員の年間期末手当3.35月×管理職加算1.15」)を乗ずると8,449,382円となり、上記の具体的年収水準の下限を求めることができます。
しかし、この年収水準は任地により異なる地域手当が支給される前のものであり、国税不服審判所の所在地でこの地域手当が支給されないのは「熊本市」「那覇市」ですので、熊本国税不服審判所・国税不服審判所沖縄事務所に赴任した場合のモデル年収が840万円程度となります。
そして、例えば、大阪市(大阪国税不服審判所本所)であれば16%、東京都特別区(東京国税不服審判所本所)であれば20%の地域手当が支給されますので、この約845万円に1.2を乗じれば、上記の具体的年収水準の上限になります。
時折「上記の年収水準の幅は、『弁護士・公認会計士・税理士の資格別』又は『過去の実務経験の評定』によるのですか?」と聞かれますが、少なくとも私が国税審判官であった当時は、資格別や過去の実務経験によって国税審判官の待遇が異なることはなく、変数は「勤務地による地域手当の差」のみでした。
ちなみに、国税審判官は国税庁長官指定官職(管理職)のため、超過勤務手当(残業手当)の支給対象ではありません。
3.震災特例
東日本大震災の復興増税の際に、国民に負担を求めることから、国家公務員について平成24年4月から平成26年3月までの2年間限定で給与手当が10%弱切り下げられたことがあります。
私は、平成26年7月の採用ですが、その募集の詳細には、上記の具体的年収水準が「760万円から840万円」と表示されていました。
しかし、これはその2年間の切り下げが反映されたもので、予定通り2年間で終了したために、私が実際に採用された平成26年7月には給与水準が元に戻っていました。
上記※1の「関係法令の改正」とは、人事院勧告といった通常の給与改定のみならず、こういった事由によるものも含まれることを自らの事例で知りました。