1.国税不服審判所とは
私は、平成26年7月10日から平成29年7月9日まで、民間登用の国税審判官として大阪国税不服審判所に常勤勤務していました。
国税不服審判所は、国税庁の特別の機関であり、国税局長又は税務署長が納税者に対して行った国税に関する不利益処分を取り消す権限がある組織です。
税理士(公認会計士)の先生方にとりましては、クライアントにまつわる税務上の論点について不明な点があった場合に、国税不服審判所の裁決事例を参考にされるということはあっても、自らが審査請求人であるクライアントの代理人となって国税不服審判所に関与されたご経験のある方は多くないものと思います。
自らがクライアントの代理人となって国税不服審判所に関与するということは、その時点で既に、クライアントが国税局長又は税務署長から国税に関する不利益処分を受けてしまった(税務調査の段階で終息させることができなかった)ことを意味しますが、税理士(公認会計士)の先生方にとっては、そういった事態はできるだけ避けたいでしょうし、それがクライアントの先生方に対する期待でもあるでしょう。
2.国税不服審判所を経験して思う税理士(公認会計士)の役割
しかし、ご自身が税務調査の立会をされていて、税務署による指摘を拒絶し、仮にクライアントが不利益処分を受けてしまった場合、そのクライアントに今後どのような道程が待ち受けているのかを冷静に見極めた上で、税務署又はクライアントの対応を行っている先生方がどのくらいおられるでしょうか。
税務調査における税理士(公認会計士)の業務は、クライアントの社長の言い分をもっともらしくスピーカーで拡声することではありません。
税務署による指摘が誤認であれば反論するのは当然ですが、不利益処分を受けてしまい、いわゆる「ガチンコ勝負」の道にクライアントを誘って、果たして納税者の権利救済の「費用対効果」が見合うものかという視点は失うべきではありません。
私は、国税審判官として国税に関する審査請求事件に従事し、代理人である税理士(公認会計士)の先生方と関与した経験を踏まえ、この経験を、不利益処分を受けてしまった納税者の「事後救済」のみならず、納税者を無用な税務トラブルに巻き込ませないという「事前救済」にこそ活かしていかなければならないと考えています。
3.取り扱うお話について
このブログにおいては、私が国税不服審判所に勤務していた経験を基に、主に税理士(公認会計士)の先生方に対して、業務の遂行に当たって参考にしていただけそうなお話を、そこはかとなくご案内していきたいと考えています。
同時に、国税出身者と机を並べて常時議論できる環境にあって、「税務行政」を内部から客観視する機会も得られたことから、私の記憶の限りで、そのようなお話もしていければと考えています。