【0191】裁決結果の公表基準

1.裁決結果の公表の経緯

裁決結果の公表については、昭和43年7月の税制調査会「税制簡素化についての第三次答申」を受け、昭和45年の国税不服審判所創設以来、この答申に沿って、国税不服審判所の使命(「納税者の正当な権利利益の救済」と「税務行政の適正な運営の確保」)の観点から、先例となるような裁決について、固有名詞を匿名にするなど、審査請求人等の秘密保持に配意した上で、裁決結果を公表事例として公表していましたが、その数は現在よりは少ないもので、税理士業界や学界において有効に活用・浸透しているとは必ずしもいえないものでした。

(参考)昭和43年税制調査会答申(税制簡素化についての第三次答申)
国税不服審判所の裁決は、原則として非公開とするが、先例となる裁決その他国税不服審判所長が必要と認める裁決については公開することを考慮する。
この場合における公開すべき事案の基準、当該事案につき公開すべき範囲及び公開の方法については、納税者の秘密保持の見地を尊重して政府において慎重に検討するものとする。

2.総務省の行政監察による指摘

その後、平成11年4月から行われた総務省の税務行政監察における指摘を踏まえ、平成12年9月8日付国管管2-2「裁決結果の公表基準について」(事務運営指針)を発遣して、先例となるような裁決について、その基準の明確化を図り、
納税者の適正な申告及び納税のために有用であり、かつ、先例性があるもの
適正な課税・徴収の実務に資するものであり、かつ、先例性があるもの
・その他、納税者の正当な権利利益の救済等の観点から審判所長が必要と認めたもの
を公表対象として、裁決結果を公表するようになりました。

ただし、審査請求人等の秘密保持に配意する必要から、
審査請求人等が特定されるおそれのあるもの
・審査請求人等の営業上の秘密が漏れるおそれのあるもの
などは公表しないことになっています。

(参考)総務省の税務行政監察(実施時期:平成11年4月~12年11月)における勧告
先例や他の申告の参考となるもの等、納税者が申告を行う上で有用な国税不服審判所の裁決内容については、納税者の秘密保持に配意しつつ、公表案件を拡充していく余地がある。

(参考)平成12年9月8日付国管管2-2「裁決の公表基準について」(事務運営指針)
1.裁決結果の公表基準
❶納税者の適正な申告及び納税のために有用であり、かつ、先例性があるもの
❷適正な課税・徴収の実務に資するものであり、かつ、先例性があるもの
❸その他、納税者の正当な権利利益の救済等の観点から国税不服審判所長が必要と認めたもの                                (注)例えば、次に掲げるものは、上記の基準に該当する。
・法令又は通達の解釈が他の事案の処理上参考となるもの
・事実認定が他の事案の処理上参考となるもの
・類似の事案が多く、争点についての判断が他の事案の処理上参考となるもの
・取消事案等で納税者の主張が認められた事案で先例となるもの
2.ただし、次に該当する場合には公表しない。
❶審査請求人等が特定されるおそれのあるもの
❷審査請求人等の営業上の秘密が漏れるおそれのあるもの
❸その他、審査請求人等の正当な権利利益を害するおそれのあるもの

3.取消事案の位置付け

さらに、上記の事務運営指針の趣旨の更なる周知徹底を図るため、平成23年3月4日付国管管2-6「裁決結果の公表基準の取扱いについて」(指示)を発遣し、取消事案については、基本的には、納税者が申告・納税や不服申立てを行う上で有用であり、かつ、原処分庁を拘束するため、これを広く周知することにより、その後の税務行政の適正な運営の確保にも資するものと考えられることから、公表する必要性が乏しいものを除き、原則として、公表基準に該当するものとして、取り扱うことになっています。

4.裁決の検索

裁決結果の公表に当たり、公表事例ごとに裁決のポイントや参考判例・裁決を付記するなど、公表事例がより有用なものとなるようその充実にも努めています。
なお、公表裁決事例として公表されていない裁決についても、情報公開法に基づく開示請求があるため、国税不服審判所ホームページ上で平成8年7月以降の裁決要旨を争点やキーワードで検索し、裁決書が特定できるシステムを提供することにより、同開示請求に対する便宜が図られています。

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