1.審査請求の代理人資格
訴訟の代理人は弁護士でなければなりませんが、国税の審査請求については具体的に代理人資格を制限していないので、税理士が代理人に就任することが可能です。
そうすると、審判所が扱う審査請求は、国税通則法75条にある「国税に関する法律に基づく処分」が対象ですので、ほぼ全ての事案について税理士が代理人に選任されているのではないかと思われるかもしれません。
しかし、実際には、代理人が選任されていない審査請求(本人請求)がそれなりの割合を占めています。
正確な統計はありませんが、私が勤務していた時分の大阪国税不服審判所では、40%程度が本人請求だったと記憶しています。
そして、代理人が選任されている事案についても、必ずしも税理士であるとは限らず、税理士関与は全体の50%を切るといった程度でした。
2.税理士代理人にみられる特徴
請求人面談等の場で、代理人税理士を拝見していると、税理士が争訟慣れしていないこともあってか、税理士代理人が審査請求人に不利な影響を及ぼすケースがままみられました。
・課税要件に沿った主張になっておらず、主張の根拠を求めても満足に答えてもらえないケース
・主張に矛盾があることに気づいておらず、審判官がその矛盾について質問しても、その質問の意味さえ理解してもらえないケース
・当初申告時の税理士による誤指導・指導不足に基因して原処分がなされたことに負い目があり、最初から諦めムードである(納税者を諦めさせるために審査請求に及んでいる)ケース
・審査請求人をコントロールできず、請求人本人が自己に不利な事実関係を大展開して述べてしまう(それに代理人税理士が気付いていない)ケース
3.税務代理できる税理士
そういった代理人税理士に出くわすたびに、「税理士代理人もっとしっかりしてくれ!そうでないと税理士全体が国税職員に軽くみられる!」と恥ずかしく思っていました。
しかし、自分が国税審判官を経験することなく、その代理人税理士の立場であったら、同じような振る舞いになっていただろうと思うと、まったく人のことは言えません。
ある請求人面談が終了した後、国税プロパー出身の国税副審判官に「税理士は飽和状態と言うが、卒業後に活動できるフロンティアがまだまだあるじゃないですか。」と言われたことがあります。
その国税副審判官は、納税者・税務署に対して理論的に説得できる税理士がいかに少ないかを私に言いたかったのでしょう。
判断権者の立場にいて気付くことが多かったことも、国税審判官を経験して得た収穫の一つだと思っています。