1.指定職とは
国家公務員には俸給表という給与テーブルがあり、属性に応じて「行政職」、「税務職」、「公安職」などの区分に分かれていますが、これらの上位に位置するのが「指定職」です。
指定職は、25万人程度いるとされる一般職国家公務員のうち1,000人程度の最高幹部であり、国家公務員総合職試験に合格して採用された、いわゆるキャリア官僚が大多数を占めます。
指定職は、「その官職の職務と責任の度が特に高度であり、かつ、一般の職員に適用される扶養手当、住居手当といった属人的な給与がなじまない官職について、職務給の理念に沿って官職毎に給与を定めることが望ましい」として昭和39年に設置された指定階級職であり、指定職に対する俸給は、民間企業でいえば役員報酬に相当するものといえます。
したがって、指定職俸給表は、「行政職」、「税務職」、「公安職」などの各俸給表よりも相応に高い水準にあります。
そして、指定職は、その中でも官職の職務と責任の度合いに応じて1号俸から8号棒まで区分(いわゆる「格付け」)されており、最も高い8号棒には、各省庁の事務次官クラスが位置付けられています。
2.国税庁における指定職
令和4年12月22日、人事院の川本裕子総裁は、岸田文雄内閣総理大臣に対して、令和5年度における一般職の国家公務員の職務の級の定数(級別定数)の設定及び改定並びに指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸の定めについて、意見の申出を行いました。
具体的な内容は令和5年度政府予算案が国会に提出された後に公表され、現時点においては令和4年度の級別定数表が公表されているもののうちの最新のものになりますが、定員が56,000人弱の組織である国税庁における指定職は28人しかいません。
3.国税庁長官と国税不服審判所長
国税庁長官は、財務本省の指定職(55人)を含めても、8号棒である事務次官に次いで財務官と並ぶ7号棒に位置しており、一般的には、財務次官には一歩手が届かなかった者の「最後の花道(退官後はそれなりの公的機関に天下り)」というイメージになるものと推察されます。
上記の級別定数表によると、国税不服審判所長(本部所長)は長官に次ぐNo.2に位置づけられていますが、これは、国税不服審判所が国税庁の特別な機関として、長官通達に拘束されない裁決権を保持していることを尊重してのことだろうと推察されます。
しかし、歴代の本部所長は法務省から裁判官出身者が(東京高検検事の身分で)出向して着任しており、財務省・国税庁のプロパー職員ではありません。
そうすると、行政官としてのNo.2としては、3号棒である本庁次長ということになるのだろうと考えられます。
4.国税局長と各地域国税不服審判所長
同じ「国税局長」「首席審判官(各地域国税不服審判所長)」であっても、その規模によって号棒に差があることがわかります。
国税局長は、大規模の東京・大阪は本庁次長に次ぐ3号棒に位置しており、他の局長は2号棒となっています。
ちなみに、沖縄は国税局長ではなく「国税事務所長」であり、指定職ではなく「行政職㈠」の最高級である10級に位置づけられています。
また、各地域国税不服審判所は国税局(国税事務所)と管轄を同じくしていますが、「首席審判官(各地域国税不服審判所長)」は、関東信越・東京・名古屋・大阪・広島・福岡が2号棒であるだけで、他の札幌・仙台・金沢・高松・熊本・沖縄は、「行政職㈠」の8級ないし10級に位置づけられています。
これに関連して、同じ国税局長であっても、東京・大阪といった大規模な局長は(国税庁採用ではなく)財務省採用のキャリア官僚の指定席であるのに対して、いわゆるノンキャリの国税職員(税務職員・国税専門官)は、たとえ一番出世であっても高松・熊本・沖縄のような小規模な局長(事務所長)までしか手が届かないという出世における違いもあるようです。
5.国税局長と各地域国税不服審判所長との差
上記で見たように、同じ官職であっても規模によって号数に差があるのですが、そもそも「国税局長」と「首席審判官(各地域国税不服審判所長)」によって差がある(具体的には、同じ管轄区域であっても国税局長の方が上位に位置づけられている)ことがわかります。
これは、両者は部下職員の数が全く違う(例えば、大阪国税局は所轄税務署を含めて9,000人弱の定員があるのに対して、大阪国税不服審判所は支所を含めて70人強である)といった組織的な影響度の違いが顕れているのでしょうし、課税・徴収といった権力行政の方が本流(出世コース)であり、そうでない審判は傍流といった位置付けが暗黙のルールになっているようにも思われます。
公務員でない者から見ているとわかりづらいのですが、当事者である国税職員は、これら級別定数の大枠が頭に入った状態で、人事異動によって自分や周囲の出世を気にしているのだろうと思います。