1.国税通則法101条の規定
国税通則法101条は、審査請求に係る手続のうち、裁決書に記載すべき事項を列挙し、裁決で原処分の全部又は一部を維持する場合における原処分を正当とする理由の記載を求め、また、裁決の効力発生時期を明らかにし、さらに、国税不服審判所長(本部所長)は、裁決書の謄本を参加人及び原処分庁にも送付することにより、裁決の結果を知らしめなければならない旨を規定しています。
本条は、行政不服審査法50条1項及び51条に相応する規定です。
2.送達されるのはコピー
審査請求についての裁決に当たっては、裁決書の原本が作成され、その謄本が審査請求人に送達されます。
裁決書謄本の送達後に、審査請求人又は代理人から、「裁決書のコピーが送達されており原本でない」といった問い合わせを受けることがありますが、そもそも原本(1部)は国税不服審判所にあり、国税不服審判所長(本部所長)から委任された首席審判官(各地域国税不服審判所長)が「原本に相違ない」旨の証明印とともに、裁決書のコピーを発送しているのです。
3.配達証明郵便で送付される
裁決書の謄本の送達方法については、国税通則法12条(書類の送達)及び14条(公示送達)の規定があり、前者の規定により郵便等によって送達するときは、配達証明郵便又は信書便の役務のうち配達証明郵便に準ずるものとして別途定めるもの、あるいは書留郵便又は信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして別途定めるものによって行うこととされています。
4.裁決の効力
裁決の効力は、審査請求人に裁決書の謄本が送達された時に生じるため、国税不服審判所は、配達証明郵便が審査請求人に無事送達されている(受け取られている)ことをモニタリングしています。
また、この裁決書の到達日は、裁決を不服として原処分取消訴訟に及ぶ場合の出訴期限に直接に関係するものであり、その明確化は裁決の効力のみならず訟務上も重要になります。
5.裁決書の記載事項
裁決書には、次の事項を記載し、国税不服審判所長(本部所長)が記名押印しなければなりません。
❶主文
❷事案の概要
❸審理関係人の主張の概要
❹理由
これらは、必要的記載事項ですので、その他の事項(例えば、事実関係、争点)を記載することは全く差し支えないとされています。
ここで、「❶主文」とは、その裁決の結論部分であって、例えば、「請求を棄却する。」とか「原処分の全部を取り消す。」又は「原処分のうち、〇〇円を超える部分を取り消す。」といった表現でなされます。
「❷事案の概要」は、原処分から審査請求に至るまでの経緯を含む要するに全体像であり、「❸審理関係人の主張の概要」は、審査請求人、参加人及び原処分庁のそれぞれの主張について、その相違点を理解することができるように、対比するなどして記述されます。
「❹理由」は、却下、棄却、全部若しくは一部取消し又は変更の理由であり、裁決でその審査請求に係る原処分の全部又は一部を維持するときは、その維持される処分を正当とする理由が明らかにされていなければなりません。
この理由として記載する程度、記載された理由の拘束性、原処分の理由と裁決の理由との関係等については、再調査の請求についての決定の場合と同様であるとされています。
6.裁決書謄本の送付
国税不服審判所長(本部所長)は、裁決書の謄本を原処分庁にも送付しなければなりませんが、ここで、「原処分庁」とは、いわゆる調査課所管法人の場合には当該国税局長を意味し、この場合には、その処分に係る税務署長にも送付しなければなりません。
すなわち、裁決書謄本の送付先は、その態様に応じて次の範囲が想定されます。
❶審査請求人(共同審査請求において総代が選任されているときは、その総代)
❷原処分庁(いわゆる国税局調査課所管の納税者に係る更正等の事件にあっては、当該国税局長のほか、更正等をした税務署長を含む。)
❸処分の相手方以外の者が審査請求人である場合で、処分の取消変更の裁決を行うときにあっては、処分の相手方
❹参加人
❺原処分に係る訴訟が係属している場合、その係属裁判所
❻登録免許税法26条第1項の規定による登記機関の認定処分又は自動車重量税法12条第1項の規定による国土交通大臣等の認定処分についての事件にあっては、その納税地の所轄税務署長