1.本部・支部・支所
国税不服審判所は東京霞が関の財務省本庁舎内に本部があり、各国税局(国税事務所)管轄で12の支部(各地域審判所)があります。
そして、納税者の便宜など考慮してか、関東信越支部に「新潟支所」「長野支所」、東京支部に「横浜支所」、名古屋支部に「静岡支所」大阪支部に「京都支所」「神戸支所」、そして、広島支部に「岡山支所」の計7つの支所がありますので、本部・支部と併せて計20の拠点があることになります。
しかし、この7つの支所ですが、組織としては2つに大別されます。
2.組織的な違い
「国税不服審判所の支部の支所に派遣する国税審判官等の定数について」には、7つの支所の官職別の定員が以下のように示されています。
・新潟支所:(国税審判官)1+(国税副審判官)2+(国税審査官)1=4
・長野支所:1+2+1=4
・横浜支所:5+2+4=11
・静岡支所:2+1+1=4
・京都支所:4+2+3=9
・神戸支所:4+2+3=9
・岡山支所:2+1+1=4
具体的には、定員が4人の「新潟・長野・静岡・岡山」とそれ以外の「横浜・京都・神戸」に分けることができます。
うち、「横浜・京都・神戸」は部門が2つあり、両部門を統括する審判官が(個別事件を持たない)支所長となりますが、この3支所長は支部の部長審判官級という格付け(年1回審判所本部で開催される部長審判官会議のメンバー)であり、支所という組織も支部の「審判部」扱いになります。
これに対して、「新潟・長野・静岡・岡山」は部門が1つしかなく(各事件には3人の審判官・副審判官で構成される合議体が必要であり、審判官+副審判官が3人では合議体が1つしか組成できない)、支所長も個別事件を持ち(すなわち担当審判官となり)、格付けも総括審判官級であり、支所という組織も支部本所の審判部の1部門というところになります。
3.来客・電話対応
支所は本所と異なり定員が限られるものの、官公署である以上、土日祝・12月29日から1月3日を除いては開庁していなければなりませんので、例えば年末年始やゴールデンウイークなどに休暇を取得する場合には極端に出勤者が少なくならないように工夫する必要があります。
私は神戸支所に1年勤務していましたが、8月15日の勤務者が私と審査官1人であり、静かなオフィスで黙々とそれぞれの業務をしながら、正午になると(終戦記念日の)黙祷を行った記憶があります。
とりわけ担当審判官を補佐し庶務を担う審査官の全ての者が休むと日常の業務に支障をきたすことがありますので、お互いに日程調整をしていたように記憶しています。
また、支所とはいえ、支部本所と同様に審査請求人(又は審査請求を検討している者)が予告なく来訪することがあり得ますので、その来客対応に(少ない人数で)対応をすることになり、支所が税務署庁舎を間借りしている影響からか、税務署との区別がついていない納税者、苦情窓口と勘違いしている納税者などもやってきて、主に対応する審査官は手を取られてしまうということがありました。
特に、電話については、支部本所は交換手や管理課が対応してくれますが、支所は直接電話に出て応対する必要があり、外様の審判官である私も電話応対して担当者に取り次ぐことがありました。
4.民間出身の国税審判官が本部・新潟・長野に配置されることはない
国税不服審判所のホームページの「国税審判官(特定任期付職員)の募集について」の「勤務地」には、「全国の審判所支部又は支所のいずれか」という記載があります。
まず、本部は全国の支部の司令塔の役割があり、民間出身の国税審判官に期待されていることはとにかく個別事件の処理にありますので、直接審査請求人と遣り取りすることがない本部への配属は考えられません。
そうすると、民間出身の国税審判官は、全国12の支部と7の支所に配属される可能性がありますが、上記の各支所の定員が変わらない限り、新潟・長野に配置される可能性は「零」と断言して差し支えありません。
理由は、新潟・長野は審判官定員が1であり、民間出身の国税審判官も審判官であるため、新潟・長野に配置されると、即「支所長」ということになります。
しかし、新潟・長野の支所長は個別事件を持つといえども、それのみならず、支所長としての管理業務の全般を担うことになり、昨日・今日公務員になったばかりの民間出身の国税審判官が対応できるものではないのです。
更に、前述のとおり、民間出身の国税審判官に期待されていることはとにかく個別事件の処理にあり、それは、いわゆるヒラ(役付でない)の審判官ということになりますので、どうしても審判官定員が2以上の支所にしか配置できないことになります。
ちなみに、同じ支所定員4の支所であっても、静岡・岡山は審判官定員が2ありますので、それぞれ1ずつ民間出身の国税審判官が配置されています。