【0208】国税審判官採用試験の実際(その1)

1.面接試験実施要領

「弁護士山中理司のブログ(https://yamanaka-bengoshi.jp/)」に山中先生が行政文書の開示請求をされて入手された各種書面が公表されていますが、その中に国税不服審判所本部が作成した「国税審判官(特定任期付職員)の面接試験実施要領(平成30年1月10日)」というものがあります。

国税審判官(特定任期付職員)の面接試験実施要領

私は国税審判官採用試験を平成24年と平成26年の2回受験しており、平成24年は面接試験で不採用となり、平成26年で採用されていますが、実際に受験した者として非常に興味深い資料でした。
経験者としてこの実施要領を見た際に何が窺えるかについて記述します。

2.「1 概要」の面接試験対象者数

民間出身の国税審判官は特定任期付職員であり、いわゆる任期付職員法によって任免されるところ、同法は5年以内の任用を予定しており、国税審判官については、原則として3年(1年の任期延長の可能性あり)周期での入れ替わりを想定していることから、「毎年15人程度採用×3年+任期延長者5人程度=全国で50人体制」が平成25年以降維持されています。
この「50人」とは、担当審判官を担う国税審判官の定員が全国で約100人おり、民主党政権下の平成23年度税制改正大綱において「事件を担当する国税審判官の半数程度を民間専門家にする」と謳われたことを具現化した人数です。
今回の平成30事務年度(平成30年7月10日採用)も15人の採用が予定され、結果的には93人の応募に対して16人が採用されていますが、面接試験の対象者(30人)は概ね採用者の倍程度であることが窺え、応募者数が何人であっても、書類選考に合格すれば、競争倍率は2倍程度に収まっているということになります。
なお、この「30人」は、面接試験官の日程(2日間)を拘束できる限度いっぱいの人数として設定されているものと想定されます。

3.応募者の資格別内訳

面接試験の資格別の内訳についてはマスキングされていますが、書類選考不合格者を含む応募者全体の資格別の内訳は税務通信No.3515(2018/7/16)12頁に記事があり、弁護士が32人中13人合格(2.46倍)、税理士が44人中2人合格(22倍)、公認会計士が17人中1人合格(17倍)であることが記載されています。
全体としては93人中16人が合格していますが、資格別では弁護士がかなり広き門で、税理士・公認会計士がかなり狭き門であることがわかります。

4.「2 日程」

30人の面接試験の他に、前日夕方に事前打ち合わせ、当日夕方に合格者決定の会議を開催していることがわかりますが、面接試験官のメンバーを後日再度招集することが難しい(特に大阪国税不服審判所長は大阪から出張参加している)からか、面接最終日のうちに合格者の決定まで行っていたことがわかります。
面接日程は1人当たり25分間隔としているようですが、前後の入れ替わり時間を考慮すると実質的には20分といったところでしょうか。
私の経験上では、特に2回目(平成26年)は、控室を出てから戻ってくるまでに45分くらいが経過していた記憶があるのですが、緊張のせいか実際よりも長く感じたのかもしれません。

5.「3 面接試験官等」

民間出身の国税審判官は国税不服審判所の最高幹部が直々に面接して選考していることが窺えます。
面接試験官6人の出身は以下のとおりであり、法曹とキャリア官僚によって構成されています。

・国税不服審判所(本部)所長・・・裁判官
・国税不服審判所(本部)次長・・・キャリア官僚
・国税不服審判所(本部)部長審判官・・・キャリア官僚
東京国税不服審判所長・・・検察官
大阪国税不服審判所長・・・裁判官
国税庁長官官房人事課長・・・キャリア官僚

なお、立会人として面接に陪席している2人もキャリア官僚です。
私が最初に受験した際は、目の前の面接試験官がどのようなレベル・出身の方であるかもわからず、ただただリーガルマインドに関する自らの素養のなさを曝け出した記憶しかありませんでしたが、後日、近畿税理士会会報(新年号)で当時の大阪国税不服審判所長(西川知一郎さん)の年始挨拶の顔写真を見て「この人か!」と思ったものでした。
このメンバーだけでも、弁護士に有利で、税理士・公認会計士に不利であるのは想像に難くないのですが、任官されて、たとえ扱うのは税法であったとしても準司法機関としての機能である以上は、リーガルマインドに関する質問が飛ぶのは致し方ないのだろうなと思いました。
国税不服審判所は国税局(国税事務所)管轄で全国12の支部があり、それぞれに各地域審判所長がいるのですが、やはり東京と大阪は別格であり、それぞれ法務省からの検察官・裁判官の指定席となっています(裁判官は東京・大阪の高検検事に転官の上で国税不服審判所に赴任します)。

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