【0220】口頭意見陳述の留意点(その2)

1.申立ての方法

担当審判官及び分担者(担当審判官の命により調査審理に従事する国税審査官)は、口頭意見陳述を行う旨の申立てをした者に対し、原則として、「口頭意見陳述の申立書」の提出を求めます。
口頭意見陳述の申立てを書面によって行わなければならないとする法令上の規定はありませんが、手続の明確化のため求めることになっています。
また、形式審査の段階で口頭意見陳述を行いたい旨の申立てがあった場合には、担当審判官の指定の通知があった後に「口頭意見陳述の申立書」を提出するよう説明することになります。

2.書面によって行うように求める趣旨

口頭意見陳述の申立てを書面によって行うように求める趣旨は、口頭意見陳述が全ての審理関係人を招集した上で実施される手続であること、また、原処分庁に対して質問を発することができる手続であることから、請求人又は参加人が口頭意見陳述を申し立てる意思があることを明確にするためであるとされています。
しかしながら、申立てを書面によるものとする法令上の規定はありませんので、前記の依頼は、飽くまでも協力要請(お願いベース)であり、提出を求めたにもかかわらず、その後申立人が申立書を提出しない場合には、再度、その真意を確認し、申立人が口頭意見陳述を行う意向である限りにおいては、申立書の提出がなくても、口頭意見陳述を実施せざるを得ないことになります。

3.審査請求書等に申立てを行う旨の記載があった場合

担当審判官及び分担者は、審査請求書、反論書等において口頭意見陳述の申立てをする旨記載されている場合には、請求人又は参加人に対しその真意を確かめた上、口頭意見陳述を行う意向であるときは、審理手続の経過を記録上明確にしておく必要があるから、これらとは別に「口頭意見陳述の申立書」の提出を求めることになります。

4.面談等の際に申立てがあった場合

担当審判官は、請求人又は参加人と面談等している際に、その場において請求人又は参加人から口頭により、口頭意見陳述をしたい旨の申立てがあった場合(質問、検査等を行う目的で請求人又は参加人の自宅等に臨場した際に申立てがあった場合も含まれます。)には、原則として、下記の説明を行い、その場における口頭意見陳述を実施することなく、「口頭意見陳述の申立書」を求めることになります。
・口頭意見陳述は、原処分庁も出席した上、原処分庁に質問を発することができるが、この場において口頭意見陳述を行うと質問を発することができない。
・口頭意見陳述とは別に、担当審判官が申立人との面談において、申立人が主張した内容は、これを録取し、申立人の主張として取り扱うことができる。

5.面談等の場での口頭意見陳述の実施をなお要望する場合

担当審判官が説明してもなお申立人が口頭意見陳述を行いたい旨申し出たときには、口頭意見陳述を実施せざるを得ないことがあるかもしれませんが、この場合でも上記の説明をした旨を内部の記録書において明らかにしておき、手続面で瑕疵がなかったことを明らかにしておくことになりますし、この場合でも、口頭意見陳述を実施した場合の陳述(主張)と担当審判官が審理関係人に対してする質問に対する答述(証拠収集)とは、明確に区分することが求められます。
なお、その場に担当審判官がいない場合には、口頭意見陳述を実施するか否かを意思決定する者がいないことになりますので、実施しないことになります。

6.口頭意見陳述の陳述と担当審判官の質問に対する答述とを区別する理由

口頭意見陳述は、審査請求書及び反論書等に記載された審査請求の趣旨、理由を口頭により敷延説明することを趣旨とするものですので、その内容は、いわば「主張」とみるべきものです。
他方、担当審判官の質問に対する答述は、特に、証拠資料として位置付けることができます。
このような性格の相違からして、口頭意見陳述の陳述と質問に対する答述とは、じ後における処理手続に差異を生じることとなることから両者を区分する必要があるのです。
なお、担当審判官は、口頭意見陳述の機会を利用して申立人に対し口頭意見陳述の範囲を超える質問を行うことが妨げられるものではなく、国税通則法第97条第1項の職権調査の規定により、証拠資料として位置付けることができる答述を求める質問をすることができるとされています。
ただし、これは口頭意見陳述の手続とは別の手続によるものであるので、その旨を明らかにした上で質問する必要があるでしょう。

7.その後も申立書を提出しない場合

上記の説明を尽くしたにもかかわらず、その後申立人が口頭意見陳述の申立書を提出しない場合には、再度、その真意を確認し、申立人が口頭意見陳述を行う意向であれば、口頭意見陳述の申立書の提出がなくても、口頭意見陳述を実施することとし、日時、場所等を通知することになると考えられます。

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