【0221】口頭意見陳述の留意点(その3)

1.再度の口頭意見陳述の申立て

口頭意見陳述を実施した後、当該申立人が再度口頭意見陳述を申し立てた場合は、担当審判官は下記の運用を執ることになります。
口頭意見陳述は、請求人又は参加人に繰り返しこれを行う権利を付与するものではないため、原則としてこれに対応する必要はありません。
担当審判官は、再度口頭意見陳述を申し立てた者に対し、口頭その他適宜の方法により、その旨及び主張書面を提出できる旨を連絡することになります。
ただし、担当審判官がその申立てが口頭意見陳述の趣旨、目的に沿っているか否かを検討の上、口頭意見陳述の機会を与える必要があると判断した場合には、再度口頭意見陳述の機会を与えることを妨げるものではありません
担当審判官が再度の口頭意見陳述の機会を与えると判断した場合の招集手続は、第1回目の手続と同じです。
この場合、第1回目の口頭意見陳述の実施後に、新たに争点となった事項等に関して口頭意見陳述の申立てがされたなどの場合については、原則として、その機会を付与することになります。
なお、代理人によってされた意見陳述の効果は、申立人に帰属するものですので、申立人から改めて口頭意見陳述の申立てがあったときは、代理人によってされた意見陳述と 重複しない限度でこれを行わせることになります。

2.発問権の回答に対する再質問

既に実施した口頭意見陳述において、申立人の質問に対する原処分庁の回答書面が提出された後、その回答に関して申立人が、更に質問を行うことを前提として再度の口頭意見陳述の申立てを行った場合には、担当審判官はその内容を聴取した上、必要に応じて原処分庁に釈明を求めることとし、原則として、再度の口頭意見陳述の機会を与えないことになりますが、口頭その他適宜の方法により、その旨及び求釈明事項等を記載した書面を提出できる旨を連絡することになります。
この場合、既に実施した口頭意見陳述の際の質問に対する回答が、後日、原処分庁から書面により行われた場合において、その回答が明らかに質問に対応していないときは、担当審判官は、原処分庁に対して釈明を求めた上、必要に応じて、再度回答させることになりますが、申立人が、原処分庁の回答に対して、納得できないことなどを理由に、再度口頭意見陳述の申立てを行ったとしても、担当審判官は、そのことのみを理由としては、原処分庁に対して釈明を求めることや再度の回答を求めることを義務付けられているわけではありません。
また、既に実施した口頭意見陳述において原処分庁が回答を行った際に、申立人の陳述や質問が足りなかったことを理由に再度口頭意見陳述の申立てがあった場合についても、 そのことのみを理由としては、重ねて機会を付与することを義務付けられているわけではありません。

3.適法な審査請求と口頭意見陳述との関係

担当審判官を指定する前に審査請求書等において口頭意見陳述の申立てがあった場合において、国税通則法第92条(審理手続を経ないでする却下裁決)の規定により不適法なものとして審査請求を却下するときには、口頭意見陳述の機会を与える必要はありません。
結果的に不適法となる事件の場合でも、第92条の規定による却下事件ではない事件(期限後に審査請求書を提出したことにつき請求人が正当な理由がある旨主張する場合など)については、審理手続を経て裁決する必要があるため、担当審判官は、請求人又は参加人から口頭意見陳述の申立てがあった場合には、その機会を付与する必要があります
この場合において、申立人は、「審査請求の適法性」について陳述できるだけでなく、「原処分の違法性」についても陳述できますが、口頭意見陳述の申立てが行われた時点において原処分庁から原処分の適法性に関する答弁書が提出されていない場合には、担当審判官は、申立人が審査請求の適法性に関してのみ陳述及び原処分庁に対する発問権の行使を行う旨を申し立てる場合でない限り、原処分の適法性に関する答弁書が提出されるのを待って、口頭意見陳述を実施する日 程等を調整することになると考えられます。

4.申立人に対する要請

担当審判官は、口頭意見陳述の申立てがあった場合には、簡易迅速かつ公正な審理の実現という観点から、法令上の規定はないもののが、申立人に対して口頭その他適宜の方法により、下記の事項を要請することになります。
・口頭意見陳述は、できるだけ一度の機会で終わるよう準備すること
・口頭意見陳述の円滑な実施のため、口頭意見陳述の内容を記載した書面を提出すること
・「口頭意見陳述の申立書」に原処分庁に対する質問がある旨の記載があるが原処分庁に対する質問事項を記載した書面の添付がない場合には、任意の様式により書面を提出すること
担当審判官は、前記の要請に当たり、陳述内容及び原処分庁質問書面(原処分庁に対して質問する意向がある場合)を担当審判官が依頼する期限までに提出することを併せて要請するほか、口頭意見陳述への出席要望が多数である場合には、会場等の都合や議事を迅速に促進する観点から、出席者数の調整を要請することになります。
なお、口頭意見陳述を実施する場合には、原処分庁に対する申立人からの質問事項がある場合には、当該質問事項を記載した書面等を通知書に同封することになりますが、同席主張説明や審理手続の申立てに関する意見の聴取を実施する場合とは異なり、口頭意見陳述の場において担当審判官が主張整理を主導し過ぎることは、必ずしも制度の趣旨に沿うことにはならないことから、担当審判官が申立人を含む審理関係人に対し当日に説明を求める事項など、それ以外の質問事項が多数ある場合には、担当審判官による主張整理が過ぎることとならないよう、申立人からの質問事項を記載した書面以外の書面を通知書に同封しないことも検討されるでしょう。

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