1.複数の補佐人の申請があった場合
担当審判官は、複数の補佐人の申請があった場合には、具体的にそれぞれ補佐すべき事項について釈明を求め、その回答に基づき帯同申請の許否を判断します。
なお、回答のない場合は、原則として、その中の1名を許可することとして差し支えないこととされています。
2.他の行為を目的とする補佐人帯同申請があった場合
補佐人の帯同申請が許可されるのは、口頭で意見を述べる場合に限定されていることから、他の行為を目的とするもので、例えば、原処分関係書類の閲覧について、補佐人の帯同が許可されないことは法文上明らかです。
ところで、このような閲覧に関する補佐人の帯同申請について、その決定義務の存否が問題となるところ、「補佐人の帯同申請」自体は、口頭意見陳述に係る規定が存在する限り、形式的には同条に規定する申請行為と解するほかなく、申請行為がたまたま同条に規定する要件である口頭で意見を述べる場合に該当しないにすぎないと解されています。
そうすると、前記の申請は法令に基づく申請行為であり、これに対して国税不服審判所(具体的には担当審判官)は応答すべき義務を負うものと考えられます。
ちなみに、その応答は同条に基づく許可ないし不許可であり、その性質は行政処分と解されます。
3.補佐人の必要性に関する裁判例
補佐人の必要性に関する裁判例として、下記のものがあります。
・当事者に弁論能力がないとはいえないが、難聴、言語障害、老齢、知能不十分等の原因に基づき訴訟上の行為をするについて相当の困難があり、これがため訴訟が必ずしも円滑に進行しない場合、若しくは、当事者又は訴訟代理人が事案の性質上特に必要とされる専門的知識を欠くため、適切な攻撃防御を行うことが困難であり、これがため権利の伸張、擁護に万全を期し得ないおそれのある場合において、裁判所は裁量により補佐人とともに出頭することの許可を与えることができるけれども、単に、当事者が日常、訴訟と無縁であってこれにうといとか、相手方が訴訟事務に熟達した訴訟代理人を選任しているとかいう事情だけでは補佐人の許可を与えるべきものではない(東京地裁昭和41年4月30日決定)。
・補佐人制度の趣旨に鑑みれば、裁判所が裁量により補佐人とともに出頭することの許可を与えることができるのは、訴訟代理人の選任によっては救済されない不利益が当事者ないし訴訟代理人に生じていると認められる場合に限られ、単なる法律問題や通常の事実問題のように訴訟代理人の選任によって処理されるべき事柄に関しては、補佐人制度を利用することは許されないものと解するのが相当である。したがって、裁判所が裁量により補佐人とともに出頭することの許可を与えることができるのは、当事者に弁論能力がないとはいえないが、難聴、言語障害、老齢、知能不十分等の原因に基づき訴訟上の行為をするにつき相当の困難があり、そのために訴訟が必ずしも円滑に進行しない場合、当事者又は訴訟代理人がその事案の性質上特に必要とされる人文・社会・自然諸科学の専門的知識を欠くため、適切な攻撃防御を行うことが困難であり、そのために権利の伸張、擁護に万全を期し得ないおそれのある場合、その他これに準ずる場合に限られるものと解される(京都地裁平成7年8月18日決定)。
4.補佐人帯同の許可についての送付
補佐人帯同の許可についての送付等に当たっては、事前に申請のない場合を除き、下記の手続によります。
まず、担当審判官が補佐人の帯同を許可する場合は、分担者(担当審判官の命により調査審理に従事する国税審査官)は、「補佐人帯同の許可について」という文書を作成し、担当審判官の決裁を経た上で、申立人に送付します。
次に、担当審判官が補佐人の帯同を許可しない場合(申請のあった複数の補佐人の全ての者について許可しなかった場合を含みます)は、分担者は、「補佐人帯同の不許可について」という文書を作成し、審判所長の決裁を経た上で、申立人に送付します。
また、担当審判官が申請のあった複数の補佐人のうち、一部の者について許可し、他の者について許可しない場合は、分担者は、「補佐人帯同の許可について」を作成し、担当審判官の決裁を経た上で、申立人に送付しますが、この場合において、補佐人帯同の許可については、許可する者のみを記載するとともに、なお書として、例えば「なお、前記の者以外の者については許可いたしません。」のように記載することになります。
更に、担当審判官が既に帯同の許可を与えた補佐人につき、その許可を取り消す場合には、分担者は、「補佐人帯同許可の取消しについて」を作成し、審判所長の決裁を経た上で、申立人に送付します。
ここで、口頭意見陳述の当日に補佐人帯同の申請が行われた場合には、「補佐人帯同の許可について」又は「補佐人帯同の不許可について」の作成は不要ですが、分担者は、「口頭意見陳述実施記録書」に当日の事実関係を確実に記載しておくことが求められます。
5.申立人とともに出席することの必要性
補佐人は、代理人とは異なり、申立人とともに出席した場合でなければ陳述することができません。
敷衍すると、補佐人は、代理人とは異なり、申立人とともに出頭した場合に限り、これらの者のする口頭意見陳述の範囲に限定してその補佐を行うことができる一種の代理人とみることができます。
したがって、補佐人に申立人を一般的に代理する権限はもとより存在しません。
例えば、民事訴訟手続においても「補佐人」(民事訴訟法60条1項)の制度があり、その性格は、補佐人も自分の意思に基づいて発言し、その効力が当事者本人に及ぶのであるから、一種の代理人であるとする見解が通説となっていますが、当事者又は訴訟代理人とともに出頭しなければ陳述をすることができないという点で制限があることには留意すべきであるとされています。