【0229】口頭意見陳述の留意点(その11)

1.申立人による意見陳述

担当審判官は、まず、申立人に事件に関する意見を陳述させることになります。
ここでいう「事件に関する意見」には、原処分の違法・不当についての意見のほか、審査請求期間を経過した正当な理由などの審査請求の適法性についての意見も含まれます。
陳述者が複数存在する場合には、陳述の順序を定めて、順次陳述を行わせることになります。
陳述中に、他の出席者が適宜発言を補佐することは差し支えありませんが、当該他の出席者によりその陳述を妨げる発言等があった場合には、これを制止することになります。
実務な運用としては、申立人が陳述を行う際には、審理関係人に対して事前に送付した原処分庁に対する質問書面や主に審理の終盤に担当審判官が作成して審理関係人に交付する「争点の確認表」を席上に配付し、それに沿って議事を進行することもあります。

2.陳述の制限

申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合のほか、例えば、以下に掲げる場合に該当するときは、その陳述が制限されます。
・既にされた陳述の繰り返しにすぎない場合
喧騒又は混乱が生ずるおそれがある場合
・その発言が口頭意見陳述の趣旨、目的に沿わないと認められる場合
国税通則法上は、口頭意見陳述において、担当審判官は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる旨を規定していますが、ここでいう「その他相当でない場合」とは、例えば、既にされた陳述の繰り返しにすぎない場合や、喧騒又は混乱が生ずるおそれがある場合がこれに該当するとされています。
また、代理人によってされた意見陳述の効果は、申立人本人に帰属するものですから、申立人本人から改めて口頭意見陳述の申立てがあった場合において、申立人の陳述が、代理人によってされた陳述と重複する場合には、担当審判官は、これを制限することになります。

3.口頭意見陳述と発問権の行使

口頭意見陳述における申立人の陳述は、主張に関する陳述として録取する必要がある一方で、当該陳述に際して申立人が発問権を行使し、原処分庁に対して質問を行って以降質問に対して原処分庁の回答があるまでのやり取り(より正確に言えば、口頭意見陳述の際の申立人による意見陳述以外の全てのやり取り)は、審理関係人の主張等と扱われません。
担当審判官等及び分担者(担当審判官の命により調査審理に従事する国税審査官)は、口頭意見陳述の場における審理関係人の発言等については、「主張になる」申立人の陳述だけではなく「主張にならない」発問権の行使等に関する発言の2種類があることに留意して、両者を区別して録取することが求められます。

4.発問権の行使

担当審判官は、申立人の行う質問が以下に掲げる場合を除き、原則として、申立人の質問を許可します。
・事件に関係のない事項にわたる場合
・既にされた質問の繰り返しにすぎない場合
・喧騒又は混乱が生ずるおそれがある場合
・上記に掲げる場合のほか、口頭意見陳述の円滑な遂行を阻害するおそれがある場合
ここで、上記の事件に関係のない事項にわたる質問として、仮定の質問もこれに当たると考えられます。
申立人の質問について担当審判官がその都度許可を与え、これを行わせるか、それとも申立人から質問をさせ、その質問が不相当の場合に、担当審判官がこれを不許可として原処分庁の回答を求めないこととするかは、口頭意見陳述の主宰者である担当審判官の裁量に委ねられます。
しかし、申立人から事前に原処分庁質問書面が提出されなかった場合や、原処分庁質問書面に記載がない質問を発する場合であっても、担当審判官は、そのことのみを理由に質問を許可しないことは許されません。

5.発問権の制限の判断

担当審判官が、発問権の制限の判断をするに当たっては、申立人から事前に提出された原処分庁に対する質問事項に、特に不許可とすべき質問事項が含まれていない場合には、質問すること自体についての許可(包括的な許可)を与えた上で議事を進行した方がより円滑な進行が期待できる一方で、申立人から事前に質問事項が示されなかった場合や、事前に質問事項が提出された場合であっても、申立人から提出された原処分庁に対する質問事項に、不許可とする質問事項が多く含まれる場合には、質問に対する許可を個々に与えつつ、議事を進行した方がより円滑な進行が期待できるでしょう。
なお、事前に質問事項が提出された場合において、不許可とすべき質問事項がある場合には、担当審判官は、当日の議事を円滑に進行できるよう、口頭意見陳述の期日までに、申立人に不許可とする理由等について説明し、申立人の理解を得るように努めた方が望ましいでしょう。
具体的な質問の不許可及び陳述の制限をする事例としては、「原処分庁等の職員に対する侮辱や誹誇中傷であって口頭意見陳述の趣旨に合致しない場合」などが典型例でしょう。
また、発問権の行使に関しては、原処分庁が、質問の全部又は一部について不許可とすべきである旨申立てを行うことも想定されます。
このような申立てがあった場合には、担当審判官としても、該当性の有無について真摯に検討する必要がありますが、質問を制限するか否かは、最終的には飽くまでも担当審判官の判断に委ねられます

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