1.公用文の位置づけ
審査請求人による審査請求の国税不服審判所からの回答は「裁決書」という文書によって行われます。
裁決書も公文書(公務員がその職務上作成した文書)であり、公用文のしきたりに服することになります。
官庁における行政が原則として文書によって行われていることからすれば、公文書は国民にとってわかりやすいものでなければなりません。
例えば、国税庁長官が発する通達がごく少数の職員だけにしかわからなかったり、誤解されたり、いろいろな意味にとられたりするようであってはいけません。
特に、租税関係の法令の解釈通達は、納税者の権利義務に影響するものですし、公開しているものですから、相応の知見のある者であれば誰が読んでも同じ趣旨に理解できるように、正確に表現しなければならないでしょう。
一方、公文書は部内又は他官庁などへの意思伝達のための手段ともなるため、その内容が正確であるとともに能率的な処理が求められます。
2.公用文起案の留意点
公用文を起案するに当たっては、以下のことが念頭に置かれてしかるべきでしょう。
①分かりやすく、親しみやすい表現
すなわち、一読して分かる文章にする必要があります。
難しい言葉を敢えて使うことや、回りくどい(もったいぶった)言い方をしないで、易しく親しみのある表現を選択すべきでしょう。
②行き届いた叙述
必要な事柄が正確に言い尽くされている必要があります。
しかし、それは長たらしい又はくどい言い方をすることではありません。
③生きた、節度ある文章
公用文は正確を旨とする実用文ですので、誇張や飾り立てをせず、要所要所を締めた節度ある文章にするよう心掛けるとともに、読む人を説得するような文章の起案を目指すべきでしょう。
3.書き手の個性は要求されない
そうはいうものの、本格的に文章で説得的に説明する訓練を受けたことがない私にとっては、雲をつかむようなものでした。
たとえ、昔から「作文は借文」という言葉があるといえども、やはり書き手からすれば、「自分のこれまでのキャリアが光るような個性的な文章」を書きたいものですし、どちらかといえば、学校教育ではそのような文章の方が評価されるのかもしれません。
しかし、国税不服審判所では(同所に限らず行政全般にそうかもしれませんが)、むしろ書き手の個性は修正の対象になりこそすれ、積極的に評価されるようには思いませんでした。
これを認識するようになって、法規審査などの私の起案した文章をレビューする立場の方との齟齬が緩和されたような気がします。
今回は、公用文の具体的なお作法というお話には及びませんでしたが、機会があればそのようなお話も記述してみたいと思います。