1.個別通達の時代
昭和50(1975)年1月1日から昭和57(1982)年12月31日の間に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税は、個別通達により次のように取り扱われていました。
2.事業又は居住の用に供されていた宅地の評価
相続又は遺贈により取得した宅地等で、その相続又は遺贈に係る被相続人の事業又は居住の用に供されていたものの価額(その宅地の地積が200㎡を超える場合には、事業又は居住の用に供されていた地積に対応する部分の価額)は、評価通達の定めにかかわらず、同通達の定めにより評価したその宅地の価額の100分の80に相当する金額(すなわち20%評価減)によって評価することとされていました。
3.事業又は居住の用に供されていた宅地等の範囲
「事業又は居住の用に供されていた宅地等」の範囲は、次によります。
❶事業の用に供されていた宅地等
事業の用に供されていた宅地等とは、相続開始時において被相続人がその営む事業の用に供していた宅地等をいい、貸し付けていた宅地等及び貸し付けていた建物の存する宅地等は、これに該当しないものとされていました。
❷居住の用に供されていた宅地等
居住の用に供されていた宅地等とは、相続開始時において被相続人が居住の用に供していた宅地等をいい、これに該当する宅地等が二以上ある場合には、相続開始時において被相続人が主として居住の用に供していた宅地等をいうものとされていました。
❸事業又は居住の用とそれら以外の用との双方の用途に供されていた宅地等の事業又は居住の用に供されていた部分の判定
事業又は居住の用に供する建物の一部が貸し付けられている場合のように、その宅地が事業又は居住の用とそれら以外の用との双方の用途に供されていたものである場合には、原則としてそれぞれの用途に供されていたものとされていました。ただし、事業又は居住の用以外の用に供されていた部分の地積がその宅地等の地積の10分の1以下であるときは、その宅地等の全部が事業又は居住の用に供されていたものとすることができるものとされていました。
4.宅地の地積
事業又は居住の用に供されていた宅地等の地積は、それらの土地の地積の合計数が200㎡を超える場合には、そのうち200㎡までのものとされていました。
この場合において、事業の用に供されていた宅地等と居住の用に供されていた宅地等との双方がある場合又は事業の用に供されていた宅地が二以上ある場合には、それらの宅地等のうち納税者が選択した宅地等の200㎡までの地積によるものとし、納税者の選択がない場合には、単位地積当たりの評価額が高い宅地から順次選定した宅地の200㎡までの地積によるものとされていました。
5.考察
当初は個別通達から始まっていますが、税制改正を経ない行政部内の通達によってこれだけ課税価格(税額)影響の大きな定めがあったことは驚きです。
とりわけ、当時は相続税の最高税率が75%であり、たとえ20%評価減とはいえ、適用による税額減少効果は相当なものがあったと考えられます。
しかも、現在は申告要件がありますが、当時は納税者が選択しない場合には、わざわざ単価の高い地積から選択してあげるという納税者に優しい取扱いだったことが窺えます。