【0052】わかりやすい文章を書く工夫

1.裁決書の文章が難しくなる事情

裁決書案を起案してきた立場から申し上げて、裁決書の文章が難しいことを否定する気持ちは全くありません。

税理士先生を中心に、「もっと簡潔に書けないものなのですか?」と問われるのですが、書く側の立場から申し上げれば、以下の点から致し方ないと思っています。

・裁決書は、一義的には審査請求人及び原処分庁のために出すものであるが、行政文書(公文書)であり、学者や実務家等が情報公開請求をした場合には、適切にマスキングの上で公開すべきもので、当事者以外の者が読んでも理解できるように、そして、ある程度の秩序を守って書かなければならない。

・審判所長が裁決した書面については、たとえ担当審判官であっても、行間を読むような、解説を加えるようなことを述べることは許されず、裁決書の文章の中で説明し切らなければならない。

2.裁決書案起案の研修

裁決書案の起案については、国税不服審判所内で定期的に研修があります。

まずは、民間出身審判官を含めて国税不服審判所に新たに赴任してきた者を対象とした新任者研修がありました。

また、2年目以降の職員も含めた審判部・審理部所属職員を対象として、「裁決書起案上の留意点」といった講義が設定されていました。

通常、そういった起案についての講義の講師は、法務省から2年交代で赴任してくる裁判官出身の法規審査担当審判官が担っていました。

私よりも10歳以上年下の方だったのですが、毎回同じ内容であるように見えて、毎回気づかされることがあり、文章を書くということがこんなに奥の深いものであることを改めて思い知らされました。

3.文章の工夫例

また、年に1回程度、外部講師をお招きして講話をいただく機会もあったのですが、たとえば、当時の大阪法務省訟務部副部長の鈴木和孝さん(裁判官出身・司法修習54期)の講話では、要旨以下のことをおっしゃっていました。

法務局訟務部の副部長は、国が当事者となる訴訟で、訟務検事が起案した主張書面の推敲及び決裁をする立場の方であり、週に20本程度の書面が回付されて来るそうです。

ここで、分かりやすい文章を書くための、誰でもできる工夫例を幾つか挙げておきたい。

① 一文を短くする。
読みやすい文章の王道は、何といっても一文を短くすることである。
最初に書くときは長い文章でも構わないので、その後、推敲をして一文を短くするよう心掛けてみたらどうか。

② 主語や述語の順序を統一する。
一文における言葉の並べ方を、「誰が、いつ、誰に対して、何をした。」という順番に並べるように意識してみる。
これだけで、読み手は安心して文章を読むことができるようになる。

③ 接続詞の使い方を統一する。
接続詞の使い方については、その使い方を統一しておくというのも大変有益である。
例えば、「したがって」という接続詞を、一つのテーマのまとめのところで使っている場合、他のところでは、「したがって」を用いるのは避けて、別の接続詞を使ってみる。
そうすることで、この「したがって」という接続詞が出てきたら、このレベルのテーマの最終の結論を示そうとしているのだということを読み手に意識させることができるのである。
同趣旨の接続詞であれば、常に大小関係を決めておいて、このレベルだったらこれを使うというように、接続詞に序列を付けて使うようにしてみるとよい。

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