1.国家公務員の総人件費と機構・定員管理の基本方針
私が国税審判官に任官された直後の平成26年7月25日の閣議で、「国家公務員の総人件費と機構・定員管理の基本方針」が決定されました。
私は、同日付の日本経済新聞の電子版でその記事を読んだのですが、その記事にはこうありました。
❶自衛官などを除いた約30万人の国家公務員の定員を2015(平成27)年度から毎年2%以上削減する。
❷定年退職や配置転換などによって実現を目指すもので、5年間で1割以上減らす。
❸増員は新たな重要課題に対処するため特に必要があると判断した場合に限り「新規増員は厳に抑制する」と明記した。
この記事を読んで、私は、「そうかぁ。ということは、国税庁の定員も平成27年度から毎年2%ずつ削減されるということか。国税不服審判所の定員削減も同様のペースで進むのだろうか?税務調査と異なり、審査請求事件数は審判所がコントロールできないのに、やっていけるだろうか?」と不安に思ったものです。
2.国税庁の過去5年度分の定員の増減
翌平成27年1月14日、国税庁は、ホームページにおいて「平成27年度予算(案)の概要について(定員・機構関係)」を公表しましたが、その中の「定員関係」において以下のようにコメントしています。
「定員については、992人の新規増員が認められた一方、定員合理化数が△1,057人であることから、△65人の純減となりました。これにより、当庁の平成27年度定員は、55,725人となります。」
このコメントからすると、平成26年度の定員は55,790人であり、1,057人はその約1.9%ですから、2%程度の定員削減がなされたということなのでしょうが、新規増員992人を加味すると、結局の定員削減(65人)は0.12%にすぎません。
当時の私は、「この992人の新規増員は、特定かつ大規模な政策対応のための臨時的なものなのかな?」という程度の認識でした。
しかし、平成27年からの5年間と令和2年度の国税庁定員の増減は、以下のとおりとなっており、ほぼ削減されていないといって差し支えありません。
・平成27年度 +992人(新規増員)-1057人(定員合理化)=△65人
・平成28年度 +1,037人-1,061人=△24人
・平成29年度 +1,059人-1,058人=+1人
・平成30年度 +1,061人-1,054人=+7人
・平成31年度 +1,062人-1,053人=+9人
・令和2年度 +1,194人-1,144人=+50人
3.本当に「毎年2%ずつ定員を純減する」のは大変なこと
上記の閣議決定の基本方針は、定員合理化(マイナス)の部分のみ❶❷という数値目標が記載され、❸の新規増員(プラス)については「厳に抑制」と表現されているものの、「厳に抑制」している割には、恒常的な新規増員が許容されていると思えてなりません。
余談ですが、平成29年度の「純増1人」について、その成果を誇示していた国税関係の労働組合のビラを見たことがありました。
結局、同じ組織の中で、「古い肩書を廃止するが、ほぼ同数について新しい肩書をこしらえている」にすぎないように思います。
私が国税不服審判所に在籍していた3年間についても、任官当初の私の「毎年2%ずつ純減していくのではないか?」との不安とは裏腹に、支部(各地域審判所)単位では多少の増減はあったものの、総じて定員は横ばいか微減といったところでした。
業務量が削減できない状態で、本当に「毎年2%ずつ定員を純減する」となれば、かなりの工夫・努力を要するとともに、関係各方面からの抵抗に対抗する必要がありますが、国会議員の定員削減と同様に、公務員の定員削減も至難の業なのかもしれません。