【0258】幻の国税審判庁構想(その6)

1.第43条(審理のための処分)

国税審判庁は、審理を行うため必要があるときは、事件関係人の申立てにより又は職権で、次の各号に掲げる処分をすることができる。
一 事件関係人又は参考人の出頭を求めて審問し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
三 文書その他の物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと。
四 事件に関係のある事業所その他の場所に立ち入って、事業主、従業員その他の関係人に質問し、又は帳簿、書類その他の物件を検査すること。
2 国税審判庁は、審判官に、前項第1号又は第4号の処分をさせることができる。
3以下 略
(コメント)
これに対応する現在の条文は国税通則法第97条(審理のための質問、検査等)になります。
担当審判官は、審理を行うため必要があるときは、審理関係人の申立てにより、又は職権で、次に掲げる行為をすることができる。
一 審査請求人若しくは原処分庁又は関係人その他の参考人に質問すること。
二 前号に規定する者の帳簿書類その他の物件につき、その所有者、所持者若しくは保管者に対し、相当の期間を定めて、当該物件の提出を求め、又はこれらの者が提出した物件を留め置くこと。
三 第一号に規定する者の帳簿書類その他の物件を検査すること。
四 鑑定人に鑑定させること。
2 国税審判官、国税副審判官その他の国税不服審判所の職員は、担当審判官の嘱託により、又はその命を受け、前項第一号又は第三号に掲げる行為をすることができる。
まずもって、国税審判法案では「国税審判庁から審判官に」させるとなっていますが、現在の国税通則法では「担当審判官が自ら又は他の職員に」する(させる)ことになっています。
また、質問調査に関する規定ぶりについて、国税審判法案の「審問」「徴する」「立ち入って」に対して、現在は単に「質問」になっているなど、マイルドな表現になっています。

2.第44条(調書)

国税審判庁は、審理期日における経過について、調書を作成しなければならない。
2 利害関係人は、総理府令で定める手続に従い、前項の調書を閲覧することができる。
(コメント)
現在の制度においても、請求人面談の経過については国税不服審判所の内部において記録を残していますが、これを国税通則法において直接的に規定する条文はありません。
また、証拠の閲覧について、現在の制度では、相手方から任意に提出のあった証拠及び担当審判官が職権で収集した証拠について閲覧請求の制度があるところ、国税審判法案には、上記の審理期日における調書の他に証拠の閲覧を規定した条文はありません。

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