1.各支部の規模
各地域国税不服審判所は、国税不服審判所の組織内の名称としては「国税不服審判所支部」といい、国税局・(沖縄)国税事務所管轄と同様に全国に12か所設置されています。
また、東京国税不服審判所には横浜支所、関東信越国税不服審判所には新潟支所と長野支所、名古屋国税不服審判所には静岡支所、大阪国税不服審判所には京都支所と神戸支所、広島国税不服審判所には岡山支所が設置されています。
12の各支部の首席審判官(すなわち各地域審判所長)には、本部所長から裁決権が委任されており、首席審判官の決裁によって裁決書が日々発出されています。
ただし、国税局が規模に応じて定員に大きな違いがあるように、国税不服審判所支部も定員に大きな違いがあり、東京国税不服審判所が総員130名程度の陣容であるのに対し、国税不服審判所沖縄事務所は総員7名しかいません。
大小さまざまな支部の中で特に規模の大きい「東京・大阪・名古屋・関東信越・広島」の各支部を「基幹支部」と位置付けていますが、これらの支部は、法規審査担当の審判官として、判事(補)又は検事が法務省から出向してきており、原則として自前で(本部に頼らずに)裁決判断が可能と考えられています。
そうすると、これら以外の小規模の支部については、たとえ、首席審判官に裁決権が委任されているといえども、本部がそれなりに関与する必要がありますし、その支部に着任している弁護士出身の民間登用国税審判官の重要性が増すことになります。
2.支部の機構
東京国税不服審判所は、「首席審判官(所長)」「次席審判官」「審判第1部(法規審査担当)」「審判第2部(主に資産税担当)」「審判第3部(主に徴収担当)」「審判第4部(主に法人税担当)」「横浜支所(神奈川県内の税務署長処分担当)」「管理課」という機構があり、審判部には部長審判官、総括(主任)審判官、審判官、副審判官、審査官が在籍し、管理課には管理課長、課長補佐、総務係、会計係、管理係の各機構があります。
また、大阪国税不服審判所(総員70名程度)は、「首席審判官(所長)」「次席審判官」「審理部(法規審査担当)」「第1部」「第2部」「京都支所(京都府内・滋賀県内の税務署長処分担当)」「神戸支所(兵庫県内の税務署長処分担当)」「管理課」という機構がありますが、「第1部」と「第2部」の違いは、査察・国際事案が優先的に第1部の係属になる以外は、「所得・法人・資産・徴収」の各事案が交互に配付される仕組みになっています。
首席審判官は、歴代、東京が検察官、大阪が裁判官であり、他の審判所についてはおおむね国税庁キャリア官僚であることが多いですが、小規模の支部(高松や沖縄など)はノンキャリ(高卒相当の税務職員・大卒相当の国税専門官)が就くこともあります。
次席審判官は東京・大阪・名古屋の3支部のみ配置され、国税庁キャリア官僚の指定席です。
7支所のうち「審判部」としての格付けは相対的に規模の大きい横浜・京都・神戸のみで、他の支所は「審判部の1部門」としての扱いになります。
ちなみに、国税不服審判所沖縄事務所は「首席審判官」「管理担当審判官」「審判官1名」「副審判官2名」「審査官2名」であり、管理担当審判官は他の支部の「部長審判官・管理課長・課長補佐・各係長」を兼ねる役割だそうです。
3.件数をコントロールできない
このように、同じ国税不服審判所支部といっても規模は様々ですが、如何ともしがたい問題があります。
例えば、国税局は「税務調査」という「攻め」の業務であり、税務調査に割くことができるリソースを基に調査件数をコントロールすることが可能でしょう。
一方、国税不服審判所支部は「不服申立て」という「受け」の業務であり、審査請求件数のコントロールをすることはできませんし、国税局が無理な調査をして無理な処分をすれば、年度によって、あるいは場所によっては、不服申立てが急増するという可能性もあります。
しかし、国税不服審判所支部の定員は、国税局と同様に人事院の査定によって決まっており、例えば、国税不服審判所沖縄事務所に大量の審査請求事案が持ち込まれても処理しきれないという事態が考えられます。
このように、国税不服審判所支部は、たまたま事案が少なければ穏やかな職場になる可能性もあれば、係属件数又は係属する事案の軽重によっては、局所的には繁忙極まるといったこともあり、そこが公務員組織の宿命であるのかもしれません。