【0069】国税不服審判所の組織(審判部編)

1.審判部と法規審査担当

国税不服審判所には12の支部があり、それを「〇〇国税不服審判所(沖縄だけは国税不服審判所沖縄事務所)」と呼称しています。

これら12の各地域審判所は規模の大小の差が大きいことから、その全てにおいて、必ずしも「審判部」という名称の組織があるわけではありませんが、少なくとも、
❶審査請求人や原処分庁担当者と直接遣り取りして調査審理を行う「担当審判官・参加審判官」とその審理の補佐をする「分担者」
❷裁決する各地域審判所長(首席審判官)を補佐する「法規審査担当者」
は必ず存在するといって差し支えありません。

このうちの❶が所属する組織を「審判部」と称して以下の説明をします。

2.審判部の組織

審判部にはその長である「部長審判官」がいて、通常は個室が与えられています。

また、部長審判官を補佐し、審判部に配付された事案の担当者を実質的に選任する「総括審判官」がいて、審判部の運営を取り仕切っています。

そして、大規模な審判部になると、部門が複数(大阪国税不服審判所では通常2部門・東京国税不服審判所では通常5部門)存在しますので、その部門に係属した事案の進行管理を行う「部門主任審判官」がいます。

この「部長・総括・主任」の各審判官は、例外なく国税プロパー出身であり、このポストを民間出身審判官が就くことはありません。

民間出身審判官は、審判部の各部門に分散して所属していますが、「部長・総括・主任」のように組織のマネジメントには関与せず、ひたすら担当する個別事件の処理に当たっています。

「総括・主任」も個別事件には関与しますが、自ら裁決書案を起案したり、職権調査に赴くといった積極的な関与まではしない(する余裕がない)というのが実際のところです。

3.各事件の関与

1つの事件に対し、担当審判官1名・参加審判官2名が指定され、担当審判官は国税審判官でなければなりませんが、参加審判官は国税審判官の他、国税副審判官も指定されます。

東京国税不服審判所の場合、審判部の各部門には、「部門主任審判官(国税プロパー)」「民間出身審判官」「国税副審判官(国税プロパー)」の3名が在籍し、この3名で合議体を組成することになりますが、通常は、部門主任審判官と民間出身審判官のいずれかが担当審判官となり、他の2名が参加審判官になります。

部門主任審判官が担当審判官となる場合には、実質的な担当者(事件主任)は国税副審判官になることが多く、裁決書案の起案についてもその副審判官が従事することが多いです。

そして、各事件ごとに各部門に所属する「国税審査官」が「分担者」として指定され、決済起案や書類の発送、議事録等の事務に当たります。

そうすると、1人の国税審判官が担当する事件は、担当審判官として関与する事件に加えて、参加審判官として関与する事件が同数程度あることになり、前者で関与する事件については自らが積極的に関係者に職権調査をして裁決書案を起案しつつ、後者で関与する事件については担当審判官からの協議依頼に都度対応したり担当審判官の起案した裁決書案のチェックを行ったりして、適宜役回りを変えていることになります。

4.人間関係の維持が特に大切

審判部の最大のミッションは個別事件の処理に尽きますが、各地域審判所の運営全体に関する事項(例えば、管理課に提出する統計資料の集計や事務運営指針の改訂の意見募集)や各審判部の運営に関する事項(例えば、審判部内でリクレーションや懇親会を行う場合)については、総括審判官の在籍する1部門に総括担当の副審判官と審査官がいて、その3名によって運営されていることが多いです。

国税は頻度に人事異動が行われ、自分に異動がなくても、部門に所属する誰かには必ず異動があり、良い人間関係もそうでない人間関係も毎事務年度ごとに御破算になります。

審判部に限らず、国税の全ての組織に共通することですが、その事務年度に立ち上がった自己の所属する組織において、いかに人間関係を円滑に進めるかがその組織の事務運営に大きな影響を与えることになり、「部長・総括・主任」の各審判官が審判部の円滑な人間関係に気を配っている場面を頻繁に見ながら、民間出身審判官は個別事件の処理に従事していたものです。 

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