【0097】「者・物・もの」「場合・とき・時」「付・附」の違い

1.公用文のしきたり

【0042(2020/2/12)https://www.trusty-board.jp/blog/1661/】において、裁決書が公用文のしきたりの下で起案されることをご案内しましたが、公用文を用いるに当たってのお作法を以下の例に従ってご説明します。

裁決書その他の行政文書の全てがこのようなお作法を墨守しているとは限らず、その決裁ラインに位置する者の属性・経験・性格等によって多少の個性はあるものと思いますが、理想的には以下のような区別をもって起案されているのが通常です。

2.者・物・もの

❶者
自然人のみの場合のほか、法人その他の団体を含めて指す場合に用います。
また、単数のみならず複数の場合にも用います。

❷物
人格のある者を除いた有体物(事物)を指す場合に用います。

❸もの
「者」若しくは「物」に属しないものを表現する場合又は「者」若しくは「物」で表現できない抽象的な物を表現する場合(例えば、ある者若しくはある物のうちの特定のある者又はある物を限定して指す場合、有体物でないもの又は有体物以外のものを含んだものを指す場合など)に用います。

ちなみに、国税審判官任官当時、国税職員や税理士出身審判官が「者」を「しゃ」と読むことに、裁判官出身の法規審査担当の国税審判官がたいそう違和感を覚えていたようで、所内の合議等の場で、わざと「審査請求人であるこの者(しゃ)が・・・」などと言いながら、国税職員を弄っていたことを思い出します。

3.場合・とき・時

❶場合
仮定条件を示し、又は既に定めている事例を引用する包括的条件を示す語であり、「災害が生じた場合」、「第5条に規定する場合」などのように用います。

❷とき
不特定の時を表す場合に用いるほか、「場合」と同様の意味、すなわち、仮定的条件を示し、又は既に定められている事例を引用する包括的条件を示す語として、「必要があるときは」、「第5条に規定する事項に該当するときは」などのようにも用います。
なお、前提条件は2つある場合には、大きい前提条件を「場合」で表し、小さい前提条件を「とき」で表します(例えば、国税庁長官は、前項の申出があった場合において、国税不服審判所長に対し指示をするときは・・・(国税通則法の改正前の第99条)などです)。

❸時
時刻の概念を表す語、すなわち、ある時点を瞬間的に捉えて表現する語であって、「申出書を提出した時」、「その時の法令により」などのように用います。

4.付・附

「付」は「あたえる・さずける」、「附」は「つく・つける・したがう・寄附する」の意味とされていますが、その区別は必ずしも明らかではありません。

もともと、常用漢字表には「付」は「フ・つける・つき」、「附」は「フ」とあって、「つける」には「付」を用い「附」は用いません。

したがって、「附」は熟語として使用する場合にのみ用いることになり、公用文のしきたりとしては、「附」には以下に掲げる語についてのみ用いることとし、そのほかは全て「付」を用います。

附箋・附則・附属・附帯・附置・寄附

しかし、冒頭に記載したように、全ての行政文書が完全に統一されているとは限りませんが、例えば、国税局の総務課といった行政文書の体裁にどうしてもうるさくなる部署を経験した者にとっては、こういった区別も気になるようです。

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