【0125】審判所の典型的な法令解釈(調査手続・理由不備・質問検査権)

1.税務調査に起因する主張

担当審判官は、審査請求書を拝読し審査請求人に対して求釈明をすることによって主張の整理を行っていき、課税処分が取り消されるか否かの分かれ目である「争点」を設定することになりますが、争点が複数ある場合に審査請求人が展開する主張の類型がいくつかあります。

そういった主張に対して、国税不服審判所はどのような法令解釈(判断の物差し)を立てて判断していくのでしょうか。

例えば、税務調査手続に関しては、「調査手続違法」「理由提示の不備」「質問検査権の範囲」などに係る主張がよく見られますが、以下の法令解釈に当てはまらない(当てはまる水準に至らない)事実関係である場合には、少なくとも国税不服審判所における権利救済は難しくなるものと考えられます。

2.調査手続違法の主張に対する法令解釈の例

「国税通則法は、第7章の2において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する調査が行われたことが課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられる。

したがって、単に調査手続に違法があることのみをもって課税処分の取消事由となるものではないと解され、調査手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなど重大な違法を帯び、何らの調査なしに課税処分を行ったに等しいとの評価を受ける場合に限り、その違法が処分の取消事由となり得るものと解するのが相当である。」

3.理由提示の不備の主張に対する法令解釈の例

「行政手続法第14条第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。

そして、不利益処分の通知書に記載された処分の理由が、処分の根拠を上記の趣旨を充足する程度に具体的に明示するものである限り、同項本文の要求する理由提示として不備はないものと解するのが相当である。」

4.質問検査権の範囲に対する法令解釈の例

「国税通則法第74条の2に規定する質問検査権は、国税庁、国税局又は税務署の調査権限を有する職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入・保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情に鑑み、客観的な必要性があると判断される場合に、職権調査の一方法として行使できるものであり、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要性があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられていると解される。

また、取引先調査についても、客観的な必要性があると判断される限り、その対象者、実施の時期、方法等の細目は、当該調査の必要性と相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられていると解するのが相当である。」

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