1.俸給表
国家公務員には、その職務の属性によって複数の給与テーブル表、すなわち、俸給表が用意されています。
事務次官、長官といった国を代表する行政の幹部級の職位を指定職といいますが、指定職俸給表は1号棒から8号棒まで区分され、財務省でいえば財務事務次官が8号棒になります。
財務省の外局である国税庁については、長官の7号棒を筆頭に、国税不服審判所本部所長の5号棒、国税庁次長・東京国税局長・大阪国税局長・税務大学校長の3号棒といった順番で続きます。
国税不服審判所に限定すれば、前述の本部所長の5号棒、本部次長及び関東信越・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の各国税不服審判所の首席審判官(各地域審判所長)が2号棒といった順番で続きます。
他の各地域審判所長は、指定職俸給表ではなく行政職俸給表(一)で処遇されますが、行政職俸給表(一)や税務職俸給表は1級から10級まで区分されています。
そして、他の国税不服審判所職員は、その殆どが税務職俸給表で処遇されています。
ちなみに、民間出身の国税審判官は、税務職俸給表7級相当であり、小規模税務署の署長級待遇となります。
2.級別定数
令和2年3月30日、一宮なほみ人事院総裁は、安倍総理(当時)に級別定数の意見の申出を行い、これにより、令和2年度の国家公務員の各官職の定員とその待遇が事実上決まったことになります。
行政職俸給表(一)も税務職俸給表俸給表も10級が最高級ですが、各級の割合はどのようになっているのでしょうか。
以下の表は、人事院の「平成31年国家公務員給与等実態調査」の「第3表 適用俸給表別、級別人数」を加工したものです(単位:人)。
スマートフォンでご覧の方で表の右側が見切れる場合は、横にしてみてください。
計 | 1 級 | 2 級 | 3 級 | 4 級 | 5 級 | 6 級 | 7 級 | 8 級 | 9 級 | 10 級 | |||
行政職俸給表(一) | 139,782 | 14,475 | 13,209 | 32,960 | 35,598 | 20,140 | 15,829 | 3,822 | 2,181 | 1,310 | 258 | ||
100.00% | 10.36% | 9.45% | 23.58% | 25.47% | 14.41% | 11.32% | 2.73% | 1.56% | 0.94% | 0.18% | |||
税 務 職 俸 給 表 | 51,149 | 7,001 | 5,066 | 6,129 | 6,205 | 12,430 | 12,042 | 1,680 | 483 | 113 | |||
100.00% | 13.69% | 9.90% | 11.98% | 12.13% | 24.30% | 23.54% | 3.28% | 0.94% | 0.22% |
税務職俸給表適用者のピークは5級・6級にあることがおわかりいただけると思いますが、(4~)5級が上席調査官級、6級が税務署の統括官・専門官・総務課長級(国税局の主査・課長補佐級)であり、ほぼ全員が5級までは昇格し、6級にもそれなりに昇格できることがわかります。
一方、他省庁の国家公務員全般が含まれる行政職俸給表(一)適用者のピークは3級・4級にピークがありますが、両者で年齢構成等に大きな違いがあるとは思えず、給与の高いポストの割合について、税務職俸給表が行政職俸給表(一)よりも多いことがわかります。
3.級別の平均給与
前述の調査の「第6表 適用俸給表別、級別平均俸給額」によると、例えば、行政職俸給表(一)の3級が301,860円、4級が361,507円であるのに対し、税務職俸給表の5級が415,767円、6級が436,495円であり、同じ国家公務員といっても相当の違いがあることがわかります(単位:円)。
スマートフォンでご覧の方で表の右側が見切れる場合は、横にしてみてください。
1 級 | 2 級 | 3 級 | 4 級 | 5 級 | 6 級 | 7 級 | 8 級 | 9 級 | 10 級 | |
行政職俸給表(一) | 186,000 | 227,844 | 301,860 | 361,507 | 383,589 | 400,414 | 430,491 | 461,795 | 511,457 | 551,929 |
税 務 職 俸 給 表 | 210,256 | 255,661 | 301,991 | 372,575 | 415,767 | 436,495 | 452,534 | 471,170 | 507,442 |
そもそも、税務職俸給表の初任給は、行政職俸給表(一)よりも1割程度高く、俸給表の全体的な構成についても1割程度高いといわれていますが、それのみならず、給与の高いポストに就ける可能性が一般的な国家一般職よりも高くなり、生涯給与の差となって顕れることになります。
もちろん、税務職俸給表適用者は、(税金を使うだけの)国家一般職と異なり、納税者・国民からのプレッシャーが圧し掛かる業務をこなすことから、給与水準に差を設けていることに一定の合理性があり、逆に、そうしなければ人材が獲得できないという側面があります。
ただし、この「級別定数の優遇」については対外的に見えづらいところで、国税不服審判所において同勤したある税務職員は、「広く国民に知られたら、にわかに批判されるかも・・・」と小声で私に教えてくれたことがありました。