1.国税審査分科会における裁決事例の紹介
2020年に公表された「国税不服審判所の50年」を基に、過去の国税審査会又は国税審議会国税審査分科会でどのような意見申出事案又は裁決事例が紹介され、委員に内容共有されたのかについて、ご紹介します。
2.昭和時代(国税審査会)
❶第8回(1979/10/9)・・・意見申出事案
・資産を取得するために要した借入金利子の取得費算入に係る審査請求事案(申告所得税)について
・資産を取得するために要した借入金利子及び借入金債務担保のための抵当権設定費用の取得費算入に係る審査請求事案(申告所得税)について
❷第9回(1981/1/29)・・・意見申出事案
・相続により取得した定期預金の評価に係る審査請求事案(相続税)とその措置について
❸第11回(1985/5/17)・・・裁決事例
・譲渡担保設定者の滞納国税を譲渡担保財産から徴収することができる時期に関する裁決について
❹第12回(1985/10/14)・・・裁決事例
・離婚成立前に不動産の贈与を受けた妻に対し第二次納税義務の追及をすることの可否に関する裁決について
❺第13回(1986/10/14)・・・裁決事例
・解除権の行使によって贈与契約が解除された旨の主張を認めた裁決について
❻第15回(1988/10/31)・・・裁決事例
・使用人兼務役員の使用人としての職務に対する相当な賞与の額を算出する場合に比準者が存在しないときには、同種の事業を営む法人の使用人の賞与の支給倍率等を勘案して算出することが相当であるとした裁決について
3.平成時代(平成7年開催まで)
❶第16回(1989/12/8)・・・裁決事例
・死亡退職手当金で購入した中期国債ファンドの解約金を市へ贈与した場合に も租税特別措置法第70条の規定の適用があるとした裁決について
❷第17回(1990/11/22)・・・意見申出事案
・住宅取得特別控除に係る審査請求事案(申告所得税)について
❸第18回(1992/1/30)・・・意見申出事案
・代償財産として金銭が交付された場合の相続税の課税価格及び各人の算出税額に係る審査請求事案(相続税)について
❹第19回(1993/1/28)・・・裁決事例
・国外のオークションを通じて購入した資産が減価償却資産に当たるとした裁決について
❺第20回(1994/1/27)・・・裁決事例
・譲渡物件は居宅新築のための仮住まいと認められ、譲渡所得について租税特別措置法第35条の規定による特別控除はできず、また、居住期間を偽った住民票の添付は重加算税の対象になるとした裁決について
・貸家としていた居宅を売却するに当たり、夫より持分2分の1の贈与を受けて、贈与税の配偶者控除の適用を受けるため仮住まいした上、実際には居住しない贈与税の申告期限の日を含めて居住したように工作した住民票を添付し申告したことは、隠ぺい又は仮装の行為に当たるとした裁決について
・請求人の住民票が譲渡家屋の所在地から移転しなかった事情等を考慮すると、当該住民票を添付したことが必ずしも事実を隠ぺいしたと推認できず、請求人の調査時における虚偽答弁等をもっては仮装したとはいえないとした裁決について
❻第21回(1995/1/30)・・・裁決事例
・外国法人の標章を不正に使用したことを理由とする損害賠償請求訴訟事件に関して、請求人が外国法人に支払った和解金が、国内源泉所得として源泉徴収の対象になるとした裁決について
・消費税施行前に販売した商品につき返品があったように仮装して、消費税額の還付を受けたことに対し、重加算税を賦課したことは適法であるとした裁決について
・海砂を採取する権利の取得に際し、利害関係のある漁協の同意を得るために支払った漁場迷惑料は、仕入税額控除の対象となる課税仕入れの対象とはならないとした裁決について
・離婚に伴う裁判上の和解に基づき居住用土地の2分の1を分筆して相手方に所有権の移転登記をしたことにつき、その実質は離婚に伴ってなされた共有土地の分割であり、これによって譲渡所得が発生することはないとした裁決について