1.標準審理期間の設定及び具体的な標準審理期間
審査請求は簡易迅速かつ公正な手続により国民の権利利益の救済を図る制度であり、担当審判官は簡易迅速かつ公正な審理の実現のため審理手続の計画的な進行を図る責務を負うことからすれば、事件の審理は、審理期間に関する一定の目安を持った上で。計画的に進められるべきでしょう。
そこで、国税不服審判所においては、事件の審理の遅延を防ぎ、請求人の権利利益の迅速な救済を図る観点から、審理期間の目安となるものとして、標準審理期間を定めています。
具体的な標準審理期間は、公にする方法により別途「1年間(平成28年3月24日「審査請求に係る標準審理期間の設定等について(事務運営指針)」)」と定められるところ、この標準審理期間は、審査請求の態様が通常であり、かつ、国税不服審判所における審理体制も通常であることを前提にした上で必要となる期間を設定しています。
2.標準審理期間の設定の規定が設けられた趣旨
「平成26年度 税制改正の解説」の 1127頁には、次のように記載されています。
「改正行政不服審査法において、審理の遅延を防ぎ、審査請求人の権利利益の救済を図る観点から、審査庁となるべき行政庁は、審理期間の目安となるものとしてあらかじめ定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならないこととされました(行審法16、行審法61において再調査の請求に準用)。この改正に合わせ、国税通則法においても、同様の規定が創設されたものです。なお、標準審理期間は、標準的な審理期開の目安を定めるものであり、具体的な標準審理期間をどのように定めるかは、決定又は裁決の権限を有する行政庁(国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長、税関長)の判断に委ねられています。」
「ここで、「公にする」具体的方法としては、審査請求書の提出先機関である審査庁となるべき行政庁又は処分庁の事務所(窓口)における備付け(掲示板等への掲示等)のほか、審査庁のウェブサイトに掲載すること、審査請求をしようとする者の求めに応じて提示すること等が考えられます。」
3.公にする方法
国税不服審判所長は、標準審理期間について定めた場合には、「その事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない」のですが、実際にどのような方法で公にするかは国税不服審判所長の判断に委ねられていますので、公にする方法として国税不服審判所のウェブサイトヘの掲載のほか各種広報資料に掲載されています。
なお、支部(各地域国税不服審判所)においては、標準審理期間を受付カウンター等において表示する必要はなく、上記の各種広報資料を、事務所内に備え付けるほか、審査請求書収受時、担当審判官等の指定通知等の各機会を捉え、請求人又は参加人に交付又は送付することとしています。
4.標準審理期間を経過した事件
標準審理期間は、事件の審理期間の目安として定めるものであり、設定された標準審理期間内に裁決をしなければならない義務を国税不服審判所長に課すものではないとされています。
したがって、事件について、当該標準審理期間を経過したからといって、不作為の違法又は裁決の手続上の瑕疵には当たらないとされています。
5.審理手続の計画的進行
事件について、担当審判官には一定の審理権限が与えられているところ、担当審判官が審理手続を迅速に行うためには、審理を計画的に進めることが必要であり、かつ、請求人、参加人及び原処分庁の審理関係人が、審理を迅速に行うとの認識を共有し、相互に協力することが必要不可欠です。
そこで、審理関係人及び担当審判官は、簡易迅速かつ公正な審理の実現のため、審理において、相互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければなりません。
6.審理手続の計画的進行に当たっての留意事項
国税通則法第92条の2の規定は、審理手続の計画的な進行について審理関係人及び担当審判官に一般的な責務を課すものですので、担当審判官は事件の計画的な進行を図らなければならず、審理関係人は当該計画的な進行に協力することが求められます。
また、担当審判官は、審理関係人との初回面談等において、審理関係人に対し、上記国税通則法の規定の趣旨を説明し、審理手続の計画的な進行についての協力を求めることになります。