1.協議団の発足
シャウプ勧告に基づき、政府は、昭和25年1月17日に「異議処理機関として専門の協議団を設置する等の方法を設け、その適切迅速な処理を図ること」を閣議決定しました。
この協議団の構想は、第7回国会において審議され、
❶協議団は決定権を持った独立機関ではなく、国税庁及び国税局の附属機関とする。
❷協議団の人的構成として民間人を採用する。
❸審理は協議官の合議制とする。
といった協議団の性格の大要が明らかにされ、昭和25年5月4日付の「大蔵省設置法の一部を改正する法律」によって、国税庁及び国税局にその附属機関としての協議団が設置されることになりました。
協議団の設置に当たっては、昭和25年5月9日付で、まず国税庁及び国税局に準備委員約200名が任命され、準備が全て完了したところで、同年7月1日に国税庁協議団及び国税局協議団が発足しました。
その組織及び運営の細目については、昭和25年6月30日付の「国税庁協議団及び国税局協議団令」と「国税庁協議団及び国税局協議団事務規程」によって定められ、協議団が発足した結果、国税庁長官及び国税局長が審査の請求事案を処理する場合は、協議団の協議を 経なければならないこととなりました。
2.再調査の請求
協議団が設置されるまでの不服申立制度は、更正・決定処分をした税務署長を経由して上級行政庁に「審査の請求」をするという方法でしたが、協議団が設置されてからは、処分庁である税務署長に「再調査の請求」をし、この再調査の請求についての決定になお不服のある者は、更に国税局長に「審査の請求」ができるという二審制となりました。
ただし、更正・決定通知書に、国税庁又は国税局の職員によって調査が行われた旨の記載のある場合 は、再調査の請求によらず、国税庁長官又は国税局長に対して直接、審査の請求をすることができました。
再調査の請求の期限は、更正・決定処分の通知を受けた日から1か月以内でしたが、昭和37年に行政不服審査法及び国税通則法が制定された際に、再調査の請求は「異議申立て」という名称に改められ、更に、昭和45年の国税通則法の改正により、異議申立ての期限が、1か月以内から2か月以内に延長されました。
この再調査の請求(異議申立て)に対する税務署長の決定には、「却下、棄却、及び全部の取消し又は一部の取消し」があり、その決定は原処分が違法又は不当であるかを判断するものであり、納税者に不利益となる決定はできないこととなっていました。
3.審査の請求
審査の請求には、税務署長の行った再調査の請求についての決定になお不服のある場合に行われるものと、国税庁又は国税局の職員の調査によって行われた更正・決定処分に不服のある場合に行われるものなどがありましたが、審査の請求のできる具体的な事項は、所得税法、法人税法、相続税法、資産再評価法、富裕税法に規定されていました。
これらの審査の請求は、いずれもその処分の通知を受けた日から1か月以内に、不服の事由を記載した書面をもって、当該処分の通知をした税務署長を経由して国税庁長官又は国税局長に対して行うこととなっていましたが、昭和27年4月1日から、青色申告者については、選択により直接、国税局長に審査の請求をすることが認められました。
なお、国税庁長官又は国税局長が審査の請求を処理するときは、所得税法等の規定により、国税庁又は国税局に所属する協議団の「協議を経なければならない」とされていましたが、昭和37年に国税通則法が制定されてからは、協議団の「議決に基づいて決定する」ことに改められ、協議団の議決が一層尊重されるようになりました。
また、この国税通則法の制定により、「審査の請求」は「審査請求」という名称に改められ、昭和45年の同法の改正では、異議申立てをしないで直接する審査請求ができる期間が、更正・決定のあったことを知った日から1か月以内であったものが2か月以内に延長されました。
また、協議団発足前までは、審査の決定に不服のある場合に訴願又は訴訟が認められていたところ、協議団発足後は、訴願は認められなくなりましたが、これは、審査請求が実質的に訴願と同様であることから、更に訴願を認める必要がなくなったと解されています。