【0099】国税不服審判所の設立気運が高まった背景に何があったか

1.協議団に対する批判

国税不服審判所の前身である「協議団」制度は、シャウプ勧告の影響を受け、税務署に対しては第三者的性格を有し、民間からも多数の協議官を採用したこともあって、当時としては画期的な制度として評価され、納税者の権利救済機関としてその責任を果たしてきたものの、社会情勢の変化に伴って発足当時とは異なる評価も生じつつありました。

外部からはっきりした形で批判されるに至ったのが、衆議院大蔵委員会の「税の執行に関する調査小委員会」における中間報告においてであり、この小委員会は、昭和32年11月7日、衆議院大蔵委員会の中に設置され、主として査察制度及び協議団制度に重点を置いて調査を行い、昭和33年3月13日の大蔵委員会で中間報告を行いました。

その中で、協議団制度について要旨次のように述べるとともに、協議団制度についてのPRを徹底せしめるよう努力すべきである旨要望しています。

2.中間報告の内容

この制度に対する一般納税者の主な批判には次のようなものがありました。

❶協議団は救済機関というが、国税局長の下部機構であるから、主管部(直税部、徴収部等)から強い反論があるときは勢いそれに押されて、当初の判断と異なる審査決定が行われる場合が多い。
❷協議団に持ち込んでも、審理が相当長期にわたり、その間納税者は不安定の状態に置かれ、利子税等の累積に悩まされている。
❸協議官の人事は、税務署員のうば捨山的な観があるので、沈滞している。

 

3.権力行政からの独立の要請

国税庁は、この中間報告を受けて、その後における協議団の強化策等について検討を重ね、昭和33年7月3日、同大蔵委員会において中間報告に対する見解を表明するとともに、その検討結果に基づいて逐次その改善を図ってきたようですが、その後も協議団と執行系統の部局との関係を断ち切り、その第三者性ないしは独立性を高めるべきであるとする意見が引き続き各方面から主張されていました。

また、以上の批判とは別に、更に、協議団は国税局長の下にあるため、議決に当たっては国税庁長官が発した通達に示される法令の解釈に拘束され、これと異なる解釈に従って個別事案を解決することが難しく、 法令の解釈について国税庁長官通達に示されている解釈と異なる見解を持つ納税者が不服申立てをしても、協議団も裁決権者である国税局長も共に国税庁長官通達に拘束される以上、その裁決の結果については初めから不服申立人の納得し得る裁決を期待することができないという批判もありました。

このように、国税局の主管部から独立した協議団も、更に進んで国税局からも独立することが要請されるに至り、昭和42~43年頃から、にわかに各方面でこの問題が取り上げられ、活発な議論を呼ぶようになりました。

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