1.不服申立ての代理人
訴訟代理人は弁護士でなければならず、税理士は出廷陳述権のある補佐人の地位に止まりますが、国税に係る不服申立ての代理人になることは「税務代理」の範疇ですので当然ながら可能です。
ただし、税理士しか不服申立ての代理人になれないかといえばそうではなく、有り体にいえば誰でもなれます。
実際に、審査請求人が高齢者である場合に、その子どもが代理人になるということもありますし、満足に代理してもらえる方であれば特に制限はありません。
他にも、審査請求人が商工会の組合員である場合に、その商工会の幹部が代理人になるというケースもあります。
また、代理人は法令上1人に限定されておらず、複数の代理人が選任されることもありますが、国税不服審判所としては3人程度以内にしていただくお願いをしています。
過去には、代理人が多数選任され、多勢で請求人面談にやってきたという事例もあったと聞いており、あまり多数であると、結局のところどなたのコメントに依拠して良いものかわからなくなってしまいます。
2.代理人の構成比
まずもって、全体のうちどの程度の事案に代理人が選任されているでしょうか。
殆どの事案に代理人が選任されているイメージを持たれる方が多いですが、実際にはそうではありません。
かつて、税理士会において講演するために、大阪国税不服審判所の管理課管理係に前事務年度の代理人の構成に関する簡易な統計を出してもらったことがありますが、代理人を選任している事案は全体の半分強という程度で、それ以外は本人請求でした。
所得税や加算税の事案を中心に、審査請求人ご本人で審査請求書・反論書(意見書)を起案し、証拠を提出され、担当審判官による請求人面談に臨まれる審査請求人の方は案外おられます。
それでは、全体の半分強の代理人選任事案において、税理士(公認会計士を含みます)代理人はどの程度であるかというと、全体の半分弱という印象です。
国税に関する不服申立ての代理人で最も多い属性は「税理士」であるとのイメージはそのとおりで、代理人選任事案のみを分母とすればやはり8割程度は税理士代理人であるように思います。
代理人選任事案のうちの残りの2割程度は弁護士・親族その他の関係者となります。
3.税理士代理人のポジティブ面
税理士が代理人であることの最大の特徴は、その殆どが当初申告からの関与税理士であることで、私のような不服申立てから関与する税理士はまだまだ少数派です。
当初申告から関与し、税務調査の立会も担当し、不服申立ての代理人をされていますので、「その事案の事実関係の理解」及び「争いの対象となる税法規定の理解」については十分であることはいうまでもありません。
また、「審査請求人が不服を抱く背景」をご存じであったり、「証拠として相応しい証憑の選択」等においても、担当審判官として税理士が代理人として選任されていることを大変ありがたく思っていました。
4.税理士代理人のネガティブ面
その一方、主張整理に関しては難儀する場面もありました。
例えば、審査請求人の主張内容について矛盾を孕んでいることがあり、その主張が矛盾しないことについての釈明を求めるような場面において、担当審判官の質問の真意を理解いただけないことや、いささか見当違いな回答をされることもありました。
また、審査請求人本人に質問調査をする請求人面談の場に税理士代理人が同席される場面がありますが、審査請求人が自らの主張と矛盾する答述を展開しているにもかかわらず、隣にいる税理士代理人はそれに気が付かずただメモを取っている・・・ということもありました。
更に、国税不服審判所は課税処分を取消すか否かを審理する機関であり、争いの対象となる税法規定の「課税等要件」を充足しているか否かを主眼として調査審理しているところ、必ずしも課税等要件に関係のない苦情の域を出ない主張(失当主張)をされる傾向が(弁護士代理人に比して)ありました。
税理士は「税務争訟に至らせない段階で税務署と妥結すること」がクライアントからの最大の期待役割であり、争訟慣れしていないという側面は否めないのですが、「税務代理」が税理士法上の独占業務の筆頭である以上、「税務申告書の作成」「税務相談」のみならず、「自らの主張の一貫性の確保」や「相手方の主張に対する的確な反論」ができることが大事であると感じます。
かくいう私も、国税不服審判所を経験するまでは、おそらく目の前におられる税理士代理人と同じ振る舞いだったはずであり、偉そうなことはいえません。