【0090】民間出身国税審判官の或る日の日記(その1)

1.或る1日の日記

私は、平成26年7月10日から平成29年7月9日まで大阪国税不服審判所に勤務していました。
1年目は神戸支所第1部門、2年目は大阪本所の第二部第2部門、3年目は大阪本所の第一部第1部門に配属されました。
これから不定期ながら、その3年間のうちの或る1日を日記風に切り取り、審査請求事件の審理の実際や税務行政の空気感の違いをお伝えしていければと考えています。
初回は、任官初日(平成26年7月10日)です。

2.大阪本所初出勤

集合は8:50であるが台風の心配があり8:20には天満橋に到着し、近畿税理士会館1階ロビーで時間調整。

(補足)
いくら台風とはいえ入社日の遅刻はあり得ないため、早めに移動しました。
大阪国税不服審判所や大阪国税局がある大阪合同庁舎第3号館と近畿税理士会館は同じ交差点の斜向かいにあるため、歩いて直ぐの距離で待機していました。
まだ入館証がないため、庁舎1階の守衛さんに所属と名前を伝え「来客者用」のバッジの交付を得て審判所のある13階に移動しました。

国税出身の異動者と同じ部屋かと思いきや民間出身審判官のみ第4合議室に通され、お客様扱いを受けているような感覚を覚える。
自分以外の2名の民間出身はいずれも弁護士であり、税理士・会計士は自分のみ。

(補足)
請求人面談や所内の会議で良く利用される相対的に広めの合議室が第4合議室です。
民間出身審判官の採用辞令交付は朝9時からで、その後に指定官職(税務署でいう副署長以上級、審判所では副審判官以上)、一般官職の辞令交付があります。
その2名は東大法学部・京大法学部出身の弁護士(年齢はともに40歳で私とほぼ同じ)であり、これだけでレベルの高い(自分の身の丈に合わない)職場であることを想起させました。

辞令は一人ずつであり、早速立ち位置を間違える。
挨拶回りを終えて梅本さんに個別に挨拶して神戸支所に移動。

(補足)
指定官職の辞令交付は審判所長室で所長から直接交付を受けます。
所長室は優に100㎡(10m×10m)はあり、窓からは大阪城がバッチリ見えます。
当時の所長(首席審判官)は現在の大津地裁所長である瀧華聡之さん、No.2は後の札幌国税不服審判所長である土屋雅一さんでしたが、土屋さんが所長の執務デスクの目の前におられ、瀧華さんが少し小柄だったためか、土屋さんを審判所長と誤認して土屋さんの方を向いてしまいました。
総務係長に連れられて、審理部・第一部・第二部・管理課という大阪本所の各部署を周りました。
私の2年前に、同じトーマツ出身(二次試験合格同期)の梅本淳久さんが大阪本所第一部国際事案専担で任官されており、少しばかりお話して神戸支所に移動しました。

3.神戸支所初出勤

11:15神戸支所到着。
挨拶の後に人事書類の作成や引継書類の確認を行う。

(補足)
神戸支所は総員10名の小さな組織で、庁舎は神戸市兵庫区の兵庫税務署庁舎の3階にあります。
執務室に入ったときのあの何とも言えないアウェー感は忘れられません。
まずは、手渡された分厚い封筒の中身を確認するとともに、「着任届」「宣誓書」等の記載を行いました。
指定官職の椅子は一般官職のそれよりも重く、肘置きの他、頭部にはクリーム色の布が括り付けられています。

神戸支所長は高松からの異動者でありまだ着任していない。
直属の上司となる総括審判官は・・出身で腰の低い方。
目の前の副審判官は話しかけないと答えてくれない感じ。
隣の審査官はまだ着任していない。
斜向かいの庶務担当審査官が細かい手続を教えてくれる。
2部門の民間出身である弁護士出身審判官は何やらとっつきにくい感じ。

(補足)
神戸支所長(59歳)は部長審判官級のため個室です。
私は、総括審判官(59歳)・私・副審判官(53歳)・審査官2名(47歳・42歳)の5名で構成される1部門に配属されました。
1部門に配付される事案は、総括審判官・私・副審判官の3名で合議体を構成し、事件別に2名の審査官のいずれかが分担者として審判官の職務を補佐していただくことになります。
2部門には、3年目の弁護士出身審判官が在籍し、1部門の事件についてもリーガルアドバイザーとして合議に参加する仕組みになっていました。

お昼は総括審判官・副審判官等と外食し今日のみ奢ってもらう。
午後は引継書類の確認や、総括審判官に建物内の案内をしてもらう。
庶務担当審査官に「出勤簿の押印などに使うため三文判を預けて貰えないか」と言われ驚く。

(補足)
異動日は(着任日や引継ぎの関係で)前任者と後任者が入り乱れることが多く、ある審査官にご挨拶したところ「いや、私は異動で署に戻ることになるんで」と言われました。
審判所内部の手引書の他に、事件関係の簿冊の引継ぎも受けましたが、「これをどこから読めば良いの?」と茫然自失になりました。
出勤簿は本人が押印するのが原則ですが、押印漏れや押印誤りがあるとその後の処理が煩雑なためか、庶務担当審査官が各人の出勤状況を確かめた上で、代理で押印するしている審判部もありました。
それまで勤務していた監査法人(公認会計士)としては、印鑑を預けることは内部統制上のゆゆしき指摘事項ではあるのですが、「郷に入っては郷に従え」と特段抵抗することなく預けることにしました。

初日は17:00過ぎに退所しJR神戸17:32発の新快速で帰宅。
案の定、新開地までの通勤定期が出ないことを知り、帰りに通勤定期と三文判を買う。
通勤手当の不正がないかどうかについては、年に1回程度確認の機会があるとのこと。
カラーシャツを着ている人は殆どいなかったが、持っているのはカラーシャツばかりなので、週末に5枚くらい買っておこう。

(補足)
神戸支所の最寄駅は神戸高速線新開地駅ですが、阪急・阪神による通勤者は新開地駅までが対象であるも、JRによる通勤者は徒歩15分程度歩いた神戸駅までしか対象にならず、自宅から最寄り駅までの往復を含めて毎日1時間程度歩いて1年間通勤しました。
通勤に限らず、旅費交通費の融通の利かなさについては、その後の事件関係の出張でも実感することになります。
大方の職員がホワイトシャツだったのは、その日が人事異動日(辞令交付日)だったからでした。

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