1.平成27年〇月〇日
副審判官と庶務担当審査官が支所長室にこもっていたので。支所旅行の打ち合わせかなと思っていたら、来週の籠松明見物の旅程表と地図の打ち合わせだった。
近鉄奈良駅から徒歩になるが、なぜか地図に「奈良税務署」が吹き出しがついていて笑ってしまう。
「終わったら軽く懇親会」と書いてあったが、みんな遠いのではないのか?
昼食から帰ると、梅本さんが担当審判官を務めた国際事件の裁決が下りていた。
現所長の下で決裁されたんだな・・・梅本さんお疲れでした。
証拠番号付きで335ページということは。最終版でも300ページを超えるのか?
(補足)
梅本さんとは、現在デロイトトーマツ税理士法人に帰任されている公認会計士の梅本淳久さんです。
梅本さんは英語が堪能で、大阪国税不服審判所の国際事件専担の補職辞令を受けておられました。
私の公認会計士二次試験合格同期ですが、国税不服審判所には2年早く任官されていました。
梅本さんは、退官後に司法書士試験に合格されたり、重加算税等の大著を著されたりと大変ご活躍で、私など足元にも及びません。
審判所長に回付される裁決書案には証拠と証拠番号が記載されており、最終的に審理関係人にリリースされる際にはそれが消去されますが、消去前で335ページというのが国際事案ならではのボリュームです。
2.取消しを求める対象
ただいま新しく担当する事件の概要(当初合議資料)を考えている。
もちろん、答弁書その他の情報がないと正確な記載はできないのだが、想定(妄想?)を含めて書いている。
審査請求書には「異議決定書の取消し」を求めているが、請求人の趣旨は「原処分の取消し」で間違いなく、補正書を請求人に求めてそれを原処分庁に送付して答弁書を要求していると時間がかかるので、「主張の補足説明書を審判所で作成して、それを原処分庁に対する答弁書の要求書に添付する(その後本人から主張を補充させる)方が時間短縮になり、そのようにすれば良いのではないか?」という総括審判官のアドバイスを受けた。
(補足)
国税不服審判所長に対する審査請求を経る前に異議申立て(現在の再調査の請求)を経ていると、審査請求人としてはどうしても異議決定書(現在の再調査決定書)の内容が鮮明であり、「異議決定の取消しを求める」と審査請求書に記載されているケースが大変多いです。
しかし、国税不服審判所は原処分の取消権限があるだけで、異議決定の取消権限はありませんので、形式的にはあるものの「取消しを求める対象は『〇年〇月〇日付の異議決定』ではなく『〇年〇月〇日付の原処分』である」旨の補正書を提出していただかなければなりません。
ただし、補正に時間を要する場合には、原処分庁に対する答弁書要求が遅くなるため、上記の対応が採られたのでした。
3.同席主張説明
「この事件は同席主張説明をしますか?」と総括審判官に聞かれた。
総括審判官としては、「今回は争点も明確で同席主張説明を実施する環境は整っており、今後の国税不服申立制度の改正を考えると一度経験しておいた方が良いのではないか?」という私に対するOJTの意味合いが多分に含まれた発言であろうし、自分としてもそのように思うが、合議体を組む副審判官が「する意味があるの?」と言わないかと思うと素直に「請求人に開催したいという意思があれば実施しましょう。」と言えなかった。
ただ、同席主張説明を実施する場合には、事前準備がそれなりに必要で、かつ開催の意義を事前に請求人に理解させる必要もある。
(補足)
担当審判官、審査請求人等及び原処分庁との間で事件の理解を共通にして主張及び争点を明確にすることにより、適正かつ迅速な裁決に資するため、担当審判官は、必要に応じ当事者双方と同席の上で当事者から主張等について説明を求める「同席主張説明」の実施を検討することになっていました。
しかし、この「同席主張説明」は、特に代理人を選任していない(本人審査請求の)審査請求人に開催趣旨を理解させることが難しかったことや、ややもするとセレモニーの域を出ないもの(主張内容の確認のためだけに当事者全員の日程調整を行うこと)になるため、あまり積極的に取り組んでいるものではありませんでした。
4.国税不服審判所の認知度の低さ
夕方に審査官が出た電話で、税務調査の折衝中の事案について「審判所が何とか取りなしてくれ」という趣旨の電話があったようだが、国税不服審判所が事後救済機関(準司法機関)であるということが、社会一般としてはなかなか認知されていないことからすると、この手の照会というか苦情は、波があっても常に生じ得るのだろう。
(補足)
支所は税務署の庁舎を間借りしていたことから、税務署と間違えて入室されることが多くあったほか、税務調査時のクレームやタレコミ情報を言おうとする納税者からの電話問い合わせが多くありました。
大阪本所であれば、電話交換手が取り次いでくれますが、支所はメンバーの誰かが取らなければならず、審査官がいなければ審判官や副審判官が電話を取るということもありました。