1.審査請求の仕方
国税に関する不服申立制度は、国税に関する法律に基づく処分についての納税者の不服を簡易な手続で、適正かつ迅速に処理することにより、納税者の正当な権利利益の救済を図るものです。
そのため、審査請求は訴訟手続に比し、簡易かつ弾力的な取扱いがされている反面、審査請求の手続を明確にすること等の観点から、例えば、審査請求は書面を提出して(又はe-Taxにより)行わなければならず、口頭による審査請求は認められない等の一定の方式が定められています。
2.審査請求書に法定様式はない
審査請求は書面又は国税電子申告・納税システム(e-Tax)によって提出しなければならないものの、国税通則法では、審査請求書に必ず記載しなければならない事項とその記載の程度等が定められているだけで、その様式までは定められていません。
そこで、国税不服審判所では、納税者の便宜及び形式審査の効率性の観点から、必要な記載事項を盛り込んだ審査請求書の様式を定め、用紙及び記載の手引を国税不服審判所ホームページから入手できるようにしています。
たまに、弁護士が代理人である事案や代理人の選任のない(本人請求の)事案について、適宜「審査請求書」の題目が掲記された書面が提出されることがあります。
弁護士が代理人である事案は訴状の形式を参酌して記載されていることが多いためあまり不備はないものの、本人請求の事案については、以下の記載事項が網羅的に記載されていないことが多く、実質審理に入る前に国税審査官による補正依頼に対応することを求められることが多いです。
3.審査請求書の記載事項
① 審査請求の年月日
審査請求が法定の期間内にされたものであるかどうかを明らかにするために記載します。
② 審査請求人の住所(所在地)、氏名(名称)
審査請求人が法人である場合には、法人の所在地、名称のほか、代表者の住所、氏名を記載します。
なお、審査請求人の氏名及び代表者の氏名の欄には押印が必要でしたが、「令和3年度税制改正大綱」を機に押印が不要になりました。
③ マイナンバー
個人番号又は法人番号を記載します。
④ 総代の住所、氏名
相続税関係事件は共同審査請求であることが多く、通常は総代が選任されますが、その場合には総代となっている者の住所及び氏名を記載するとともに、「総代選任届出書」を併せて添付します。
⑤ 代理人の住所、氏名
代理人がいる場合には、代理人の住所及び氏名を記載します。
なお、押印については②と同様です。
税理士が代理人となる場合には「税務代理権限証書」を添付します。
⑥ 審査請求に係る処分(原処分)
審査請求の対象とする処分を特定するために記載します。
再調査の決定に不服がある場合であっても、審査請求の対象となるのは、「再調査の決定を経た後の原処分」であり、再調査の決定処分そのものについての審査請求はできないため、原処分を記載します。
具体的には、原処分庁、原処分の通知書に記載されている日付、税目、処分の名称及び原処分の対象年分等(又は事業年度若しくは月分)を記載します。
なお、税務署長がした処分で、その処分に係る事項に関する調査が国税局の当該職員の調査によってなされた旨の記載がある書面で通知されたものについては、その職員の所属する国税局の長(国税局長)が原処分庁となります。
⑦ 審査請求に係る処分があったことを知った日
審査請求が法定の期間内にされたものであるかどうかを明らかにするために記載します。
なお、処分に係る通知を受けた場合にはその通知を受けた年月日を、再調査の請求についての決定を経た後の処分について審査請求をする場合には再調査決定書の謄本の送達を受けた年月日を記載します。
⑧ 再調査の請求をした年月日、正当な理由
再調査の請求をした者が、その請求に対する決定を経ないで審査請求をする場合には、再調査の請求をした年月日又は決定を経ないで審査請求をすることについての正当な理由を記載します。
また、法定の不服申立期間の経過後において審査請求をする場合には、経過したことについての正当な理由を記載します。
⑨ 審査請求の趣旨及び理由
審査請求書には、審査請求の「趣旨」及び「理由」を記載しなければなりません。
審査請求の「趣旨」は審査請求の簡潔な結論であり、審査請求の「理由」はそれを主張する根拠です。
「趣旨」は、処分の取消し又は変更を求める範囲を明らかにするよう記載しなければならず、「理由」についても処分に係る通知書、再調査決定書謄本等により通知されている処分の理由に対する審査請求人の主張を明らかにするよう記載しなければなりません。
この「趣旨」及び「理由」があいまって審査請求人の主張が明らかになり、国税不服審判所の判断の対象も特定できることになります。
このように、書面で主張を明らかにするよう求めているのは、国税不服審判所は当事者の主張の相違点すなわち争点に主眼を置いて審査することを基本としており、そのためには、まず、審査請求人が処分のどこに不服があるのかを十分把握する必要があるためです。
なお、審査請求書には、文言(文章)のみならず、審査請求の趣旨及び理由を計数的に説明する資料を添付すると担当審判官・参加審判官により明瞭に伝わるものと考えられます。