【0120】民間出身国税審判官の或る日の日記(その16)

1.平成27年2月〇日

自分が新たに担当することになるB事件につき本部から裁決検討事績表が発出されていたことを総括審判官と喋っていたが、国税不服審判所としては非公開(情報公開請求により公開)だった過去の裁決が独り歩きすることにつき、本部が待ったをかけたということのようである。
いずれにせよ、4月に交代する審判所長がどのようなスタンスかによって大きく方向性が変わるような気がした。
それにしても、こんなにキャリーオーバーを残して現審判所長が去って良いものだろうか・・・新審判所長の負担が重すぎると思うのだが。
せめて大阪本所の移転価格税制等の国際事件くらいはケリをつけないといけないのではないか?
自分が参加審判官をするC事件について、原処分庁からの答弁書を読むにつけ、何とこの審査請求人は余計なことをしたのだろうと思う。

(補足)
「裁決検討事績表」とは、各支部(地域審判所)が発出した裁決書を本部が事後的にレビューし、「将来その裁決書を見た者が必ずこれを確認してから参考にするように」という趣旨で本部の審判官が作成している書類です。
たいていは「この裁決書はこういった事実関係にのみ参考にできる」「こういった裁判例もあるので参考にすべき」といった内容ですが、中には「この説示は・・・と書くべきであった」「今後はこの裁決と異なる取扱いで判断すべき」といった、その裁決に係るネガティブな記載がされることもあります

大阪国税不服審判所長は歴代裁判官であり2年単位で異動となるため、平成27年4月の異動を控え「この事案までは現所長で裁決する」「この事案からは新所長で裁決する」という仕分けが行われていましたが、思いのほか積み残しになる事案が多くなるようで、「新所長はどのように判断されるのだろう。現所長の方針と異なると審理のやり直しになりかねないのだが」とやきもきしていました。
詳細については「【0101】裁決書決裁の『バスに乗り遅れる』(https://www.trusty-board.jp/blog/2427/)」を参照してください。

月末恒例の身分証明書、国税不服審判所職員証票の実在性チェックがあり、支所の保管庫から審査官が取り出してまとめて総括審判官のチェックを受けていたが、少なくとも事件を持たない支所長(部長審判官)の身分証明書等が職権調査で必要になるタイミングが果たしてあるのだろうか?

(補足)
国税不服審判所の職員には、「上記の者は国税通則法第97条第1項第1号及び第3号に規定する質問及び検査を行う職員であることを証明する」旨記載された身分証明書と、「上記の者は当所の職員であることを証明する」旨記載された国税不服審判所職員証票が交付され、職権調査時には携行して必要に応じて提示することになっていました。
ただし、体裁は税理士証票のようなラミネート加工でお世辞にもステータス感があるものではありませんでした。
また、日常的に携行するほど頻繁に職権調査の機会があるものではなく、原処分庁に対する税務調査資料の検査については、特段携行しなくても対応してくれるため、ほとんど携行した記憶がありません。
利用しない時は保管庫にまとめて保管して審査官が管理し、定期的に総括審判官による実在性チェックを受けることになっていました。

2.TKCや税理士会の会報誌

指定官職を対象に配付されるTKCの会報誌を自分にも渡される。
税理士会の会報や会員名簿もそうだが、会員数プラス関連団体にも配っているということは何部印刷しているのか?・・・と思うともったいないことこの上ない。

(補足)
国税庁長官指定官職(税務署職員録の総務課長より上位の者、国税不服審判所では国税副審判官以上の者)については、TKCから会報が毎号提供され、私にも配付されていました。
退官後にTKCに入会してほしいという営業の一環なのでしょうが、「TKCといえば飯塚事件」というイメージがある私としては意外に思うとともに、「民間企業の会報を内部職員が組織的に配付して良いのかな?」という疑問もありました。
税理士会の会報や会員名簿は国税不服審判所では審判官以上に配付されており、私は税理士法43条後段による業務停止になっていたものの税理士としての身分は維持されており会員名簿が届いていたため、審判所から配付された会員名簿を隣の副審判官に差し上げていました
これについても、「税理士会員分に加えて何部印刷しているんだ?もったいないな」と思っていたものです。

3.国税不服審判所のレクリエーション行事

副審判官が「東大寺の籠松明って行ったことあります?」って聞くので「例年は確定申告時期で行けなかったのですが・・・」というと、「3月前半の季節行事に行けるなんて審判所に居る間だけだと思うので行きませんか?」と支所長、2部門の他に自分にも誘ってくれた。
確かに今のうちしか行く機会もないだろうから参加することにした。
3月に入り事務年度末に近くなるということで、副審判官と審査官が支所旅行の具体化について話をしていたが、予算5万円(5,000円×10か月間)で奈良高野山方面l泊ということは決まっているものの、最終的な参加者数によっては根本的な見直しが求められる可能性もあるという。

(補足)
当時の神戸支所長が高松国税局からの出向者(課税総括課長)だったこともあり、「せっかく関西に赴任されたのだから」と副審判官が気を遣い、籠松明見物の他にも姫路城見物などの機会を設け、それぞれ午後(4時間)年次休暇を取得して有志で観光していました。
支部旅行については、各自の給与から10か月間5,000円ずつ積み立てし、最終的にはおじさん(私を含む)8人でちょうど開創1200年だった高野山・川湯温泉・北山村筏下りの旅行に行きました。

午後5時に神戸支所を出て、大阪本所のレクリエーション行事であべのハルカス展望台に行った。
総括審判官は本所で総括連絡会があったため。支所長と主任審判官と自分で新開地駅から移動した。
管理課は、審判所長が参加する立場であるから、運転手以外はほぼ全員参加であるのはわかるが、審理部が全15人のうち11人も参加しているとは驚いた・・・裁判官出身の審判官が産休で実質業務が止まっているからだろうか。
通常は1,500円であるが、団体割引と官負担を引いて実質参加費は550円であり、総括審判官に託す。
その後の懇親会(3,500円)に官負担はない・・・自分は参加しないが、支所長、総括審判官、主任審判官は参加していた。

(補足)
前段落の行事はあくまで有志によるレクリエーションでしたが、こちらは少額ながら官費補助のあるもので、当時竣工したばかりのあべのハルカスに行きました。
法規審査を担う審理部には、審判所長と同じタイミングで裁判官出身の審判官が赴任していましたが、この頃から(異動の3月末まで)産休を取得され実質的な司令塔不在の状態となり、審判所長も同じタイミングで異動するため、実質的な審理が停滞していたのです。

税務判断なら当事務所へ
お気軽にお問い合わせください

2024年11月
« 10月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930