【0134】民間出身国税審判官の或る日の日記(その23)

1.平成27年3月〇日

午後から大阪本所の幹部会に行くが、「一堂に会するから「会」なだけであって、双方向のコミュニケーションを取る「会議」ではないところが役所の会議ですね。」という話を総括審判官としていた。
所長次席回付予定表が昨日現在で更新されていたが、異議申立てをしていた国際事案がやはり審査請求をしてきた。
当然大阪本所1部2部門の所掌ということになるだろうが大変だ。
午後になって、大阪本所から新件が来た旨の連絡があった。
内容は、ゴルフ会員権の譲渡損が損益通算できなくなることが明記された平成26年度税制改正大綱が出た直後の平成25年12月下旬に会員権を譲渡して生じた損失を損益通算しているが、それは譲渡ではなく預託金の返還であるとして原処分庁は損益通算を認めなかったという話のようである。
2部門に「通算できなくなる大綱が出た直後ですよね?」と言ったら「やりたい?」と合議体3人みんなに言われた。

(補足)
「会議」というと双方向というイメージがあった私にとって、官僚制組織における上意下達の会議の常識は新鮮であり違和感もありました。
用意された会議次第を見ると、No.1である審判所長は「訓示」で、No.2である次席審判官は「あいさつ」だったのですが、トップは「訓示」で、それ以外は「あいさつ」という位置付けになることを知りました。
大阪本所には国際事案専門担当部門があり、具体的には第一部第2部門に係属されることになっていました。
当時は、同じデロイトトーマツ税理士法人出身の英語が堪能な梅本淳久会計士が在籍していましたが、その年の7月に任期満了退官した後のその位置には、英語の堪能な弁護士さんが着任していました。
上記の新件は、平成27年12月2日大裁(所)平27第29号裁決です。

2.幹部会出席

16時からの幹部会は7月の時の教室形式と違い、「口」の字型で、自分は審判所長の正面になっていた。
全体を見渡して「これでも自分は幹部扱いなんだな~」という感じはしたものの、審判所は頭でっかちな感じがする。
所長訓示は、管理課が用意していた文書を読み上げるといった感じだった。
「事務については順調に推移しており」というコメントがあったが、積み残しも多く本当にそうだったのだろうか。
綱紀粛正関係は酩酊についてであり、配布された国税庁監察官室リーフレットには、いまだに「113円牛すじおでん事件」が書いてあり、管理課長は「本日は2次会禁止です」とアナウンスしていた。

(補足)
国税庁長官指定官職は「幹部」と呼ばれており、その幹部を対象とした年に数回開催される会議のことです。
国税不服審判所においては、国税副審判官以上(首席審判官・次席審判官・部長審判官・総括又は主任審判官・審判官・副審判官・管理課長)が指定官職です。
しかし、国税局・税務署であれば幹部(副署長以上と一部の特官)は総員のほんの一握りながら、ベテラン職員の多い国税不服審判所は、総員の過半数が指定官職であり、幹部会といってもあまりステータスのあるものではありませんでした。
「113円牛すじおでん事件」とは、平成26年11月5日の深夜に、コンビニ店のおでん(牛すじ1本113円)を無断で食べたとして、窃盗の疑いで堺税務署の49歳の上席国税徴収官が現行犯逮捕された事件のことです。

3.審友会懇親会

懇親会は18時半開始で、自分は神戸支所長、2部のプロパー出身審判官などと一緒のテーブルだった。
部長級以上には隣に必ず管理課の誰かがついていた。
定年となる審理部長の挨拶で、大阪本所の総括審判官時代は、隣が民間出身の弁護士でありサポートして貰った」というコメントがあったが、やっぱり民間出身審判官に対する期待は弁護士メインなんだな~と思い知る。
帰りは大阪本所の林審判官と京阪の枚方市駅まで一緒に帰り、「税理士任用はあまり活躍できないですね。」「特に1年目はしんどいですね。」といった話をした。

(補足)
審友会は大阪国税不服審判所の職員互助会の名称であり、国税不服審判所は7月9日までの定年延長がないため国税プロパー職員も3月定年になることや、審判所長・裁判所書記官出身審査官は法務省から出向のため同じく3月異動になり、3月の懇親会は3月異動者の送別会の趣旨もありました。
民間出身審判官は、税理士でも弁護士でも任地が同じである限り待遇は同じになりますが、組織貢献や国税プロパー職員の期待としては「税理士(公認会計士)<弁護士」であったことは否めませんでした。
上記の「林審判官」とは、国税審判官退官後に税理士業界から初めて(東京地裁)裁判所調査官に任用された林由美子さんのことですが、上記の苦悩を抱えておられたようで、少なくとも私にはその気持ちを共有することはできました。

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