【0138】民間出身国税審判官の或る日の日記(その25)

1.平成27年〇月〇日

弁護士出身審判官が過去に担当審判官をしたD事件が週刊誌にリークされている記事が掲載されていたのを見たが、内容としては裁決書の内容から判明したようである。
開示請求時の審判所のマスキング漏れではないとは思うが・・・と総括審判官は言っている。
その後、マスキング漏れが発端ではないという旨のメールが本所管理課から総括審判官に届いたようである。
タイミングとしては報道関係者か誰かが闇雲に開示請求してピンときてリークしたというのが訟務系の経験が多い審査官の見立てである。

人事評価システムの業務目標については、
❶モデル期間内処理
❷適切な求釈明と証拠収集
❸自己研鑽
で確定させたが、前回の総括審判官の指導案から一部加筆して、
❶担当審判官であることをより意識
❷国税不服申立制度改正を意識
❸大阪国税不服審判所から発出されている裁決事例を研究する(当初の「親しむ」から変更)
という表現を追加した。

11時半ころに支所長に来客(OB税理士)があったが、12時を過ぎても出てこなくて、支所長が自分にかまわず行くように合図があったので他のメンバーで行って帰ってきたら、その税理士は一緒にお昼を摂ることを辞退(OB税理士と癒着しているように思われては申し訳ないとして)したようで支所長が一人でお昼に行っていた。

現在税務署と税務調査で揉めている納税者、そして処分を受けた納税者の2人から電話があったようで庶務担当審査官が電話で長時間対応していた。
審判所を国税局・税務署の納税者支援調整官のような役割で考えている納税者が多いような気がする。

2.弁護士出身審判官への期待

午前にE事件の最終合議をしたが、支所長から今更錯誤無効だったと主張されると審理をやり直さないといけないかも」というコメントがあった。
確かに、そうなると求釈明の取り直しになってしまう。
今となっては、本人の主張ができるだけ変遷しないようにするのが最善の策である。
それにしても、審理部の担当者は、法的なことでちょっとわからないことがあると弁護士出身審判官に意見を求めることが数度となくあり、やはり民間出身国税審判官の期待は弁護士中心だな・・・と改めて思い知った。

(補足)
民間出身国税審判官は任地が同じであれば、資格・年齢・審判所経験年数にかかわらず待遇に違いはありません。
しかし、準司法機関であるという特性に照らして、国税プロパー職員の期待はやはり裁判官がその事案の趨勢をどのように見立てるかにあり、その次に位置する者としては弁護士ということになります。
合議には、弁護士出身審判官がオブザーバーとして参加して、事件処理についてコメントしていましたが、その者の発言力が担当審判官を凌駕してしまうということもありました。
少なくとも、公認会計士・税理士出身の1年目の私よりは影響力があったのではないかと思います。
少し悔しいですが・・・力不足である以上致し方ありません。

3.新審判所長の事務視察の準備

〇日の新審判所長の支所視察については、15時55分頃に支所に到着して16時頃から10分程度、支所が入る庁舎にある兵庫税務署の署長との面談の予定を入れていた。
こういう段取りを事前にしないといけないのが事務方の大変なところだ。
たとえば、総括審判官が管理係長に電話して、喫煙・苦手な食べ物の有無を聞いていた。
ちなみに、非喫煙、苦手な食べ物なし、ワインを好まれるとのことである。
〇〇駅が最寄りということで、日々の通勤は案外大変かもしれない。
視察に当たっては、官用車による旅程表などを本所が作成しているはずである。

(補足)
トップに異動があると、その者の経歴(裁判官であれば過去に担当した有名な事件を含む)に加えて、嗜好といった個人的な部分まで少しでも情報を入手して失礼のないように・・・というのが国税公務員のスタンスであり、民間、とりわけユルユルな監査法人の組織に慣れた者からすると、いささか異常に映りました。
確かに、例えば甲殻類が苦手な方をカニ料理のお店にお連れして懇親会をするのはお互いにツライところはありますが・・・。

4.課税庁に戻れない?

12時のベルと同時に原処分庁担当者から電話があり、F事件の答弁書については、今日投函(明日到着予定)とのことだった。
副審判官が審査官に「今日が期限なのだから今日持参して来いって言えば良かったんじゃないか?・・・でもそんなことを言ったら原処分庁側に帰れないわな。」と弄っていた。

(補足)
国税プロパー職員は、国税不服審判所に数年間出向するだけでいずれは課税庁側に戻ります
そして、国税不服審判所は出世コースとしては傍流のイメージを持っている職員が多いようで、できるだけ早く、(傍流の)納税者を救済する側ではなく(本流の)徴収する側に戻りたいと考える職員がほとんどだったと思います。
副審判官もそのように考えていて、そのような軽口を叩いていたのだと思います。

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